導入事例

NGK エレクトロデバイスマレーシア様

言語・カルチャー・役職にとらわれないチームを目指して。複雑な組織の「透明化」に360度フィードバックを活用

NGK エレクトロデバイスマレーシア

Administration Division Senior Manager 鈴木 洋生様(右)
Administration Division Manager 林 正晴様(左)

  • 組織の透明化

NGKエレクトロデバイスマレーシア様は、日本ガイシのグループ企業(NGKグループ)の一員としてエレクトロニクス領域を担うNGKエレクトロデバイスの100%出資子会社です。主にセラミックパッケージや機能回路基板の製造を行っており、およそ1,000名の社員のうち日本人スタッフは25名(2023年12月時点)。さまざまな要因が複雑に絡み合うグローバル組織の「透明化」を図ろうと、マネージャー層を対象に360度フィードバックを実施されました。日本企業の海外拠点という言語と文化が混ざり合う場所ならではの難しさと、それ故に注力したことを伺いました。

構造や属性の違いから生まれる「小さな摩擦」を解消したかった

360度フィードバックを導入された背景をお聞かせください。

林様:私はマレーシアに赴任して3年ほど経つのですが、親会社であるNGKエレクトロデバイスが同様の多面評価制度を取り入れている中で、自社にこうした仕組みがないことを課題視していました。

導入前の課題は「1つのチームになりきれていない」ということでした。各メンバーが、自分の仕事にだけ向き合っているような状態です。同じ目的に向かって、お互いに意見を共有しながら、最適な選択肢を一緒に選んでいく。そういうことができていなかったため、改善するための仕組みが必要だと思いました。

「チームになりきれていない」と感じられる要因は、例えばどんなことでしょうか?

林様:まずは日本人とローカルメンバーという構造ですね。決して対立しているわけではありませんが、やはり言語やカルチャーの壁があります

また、ポジションの違いによる壁もありました。マレーシアでは、役職に対する階層意識が強いのです。目上の人を敬う文化がある、ともいえますが、その意識が強くなると「私たちとは違う人」という見方になり、上司に率直な意見を言うことがなくなってしまいます。

それから、残念ながら部門間の壁も高く感じます。もちろんこれはマレーシアだから、というわけではなく、どの組織においても共通の課題かもしれませんが。こうした構造や属性の違いから生まれるちょっとしたコミュニケーションの摩擦を、これまでしっかりケアできていなかったのです。

一番の大敵は場がしらけてしまうこと

360度フィードバックを導入することで、どのような変化を期待されたのでしょう?

林様:短期的な目的は、実態の「見える化」です。日本人とローカルメンバーの関係だけでなく、ローカルメンバー同士のコミュニケーションも細かなところまでは見えていなかったので、実際にどうなっているのかを明らかにしたいと思いました。

率直なフィードバックを引き出すのは日本でも難しいことだと思いますが、ましてや階層意識の強いマレーシアでは、自分の直属の上司を飛び越えて意見を言うなんてあり得ないことですし、そんな発想もありません。ですので、まずはみんながどう思っているのか「見える化」することを目指しました。この点は、ある程度は達成できたように思います。

360度フィードバックを導入することによって、今まで埋もれていた「声」が見えるようになるはずだ、と期待していただけたのですね。まず「見える化」に集中した理由はございますか?

林様:そうですね。ミッションやバリューを掲げても、心理的についてこれないメンバーが多いと思うのです。そのため、いきなり行動変容まで求めて追い込んでしまうと気持ちが引いてしまう人も出てくると思ったので、まずは「見える化」に集中しようと決めました。こうした施策に取り組む際、一番の大敵は場がしらけてしまうことですから。

工数をかけてつくり上げる意味がある

導入を進める上で重要視したポイントや、注意したことがあれば教えてください。

林様:初回なので、フィードバックの内容を充実させるためにも回答者の設定には力を入れました。少しでも関係がありそうな人からは多めに回答を得られるよう、同僚の設定を意識的に増やしたりしました。

結果として「NA(該当なし:知らないので回答できない)」の回答も多少あったのですが、そこは仕方のない部分だと思っています。100%実態に合うように設定することは不可能ですし、実態を把握しようとするあまり事前のヒアリングで深入りしてしまうと匿名性の問題が出てきます。そのバランスが難しくて、とても悩みました。

もう一つは、言語です。社内の共通言語は英語なので、英語でいかに分かりやすく意図を伝えられるか考えました。日本人が日本語で実施する場合でも、ちょっとした表現によってニュアンスが伝わらなくなってしまうことがあります。私たちの場合は、360度フィードバックを受けたことも、回答したこともない上、「上司に点数をつけるなんて非常識ではないか」という風潮が強い。そこを念頭に置いた上で、分かりやすく、伝わりやすい英語表現になるよう気をつけました。ただそれでも、十分ではなかったと反省しています。

実際にそういった点を意識して導入してみて、どこが一番大変でしたか?

林様:私は運営側なので、単純に導入においてはやるべきことが多くて大変でした。ただ、一度つくってしまえば翌年からは土台がある状態でスタートできますから、初回ならではの産みの苦しみだと思って乗り越えました。

360度フィードバックは、採用や人事、給与計算などと同じで、組織における一つのシステムです。その基盤をつくり上げるにはある程度の工数がかかりますし、工数をかけてきちんとつくり上げることに意味がある。そのように納得して取り組めたのは、CBASEの皆さんがはじめから嘘偽りなく「大変ですよ」と言ってくれたからかもしれません。

ネガティブな反応は前進している証

実際にフィードバックを受けたマネージャー層の変化や反応はいかがですか?

林様:対象者全員に話を聞いたわけではないのですが、直属の部下であったり、身近なメンバーからは「ショックだった」「驚いた」という声があがっています。こうした反応を見ると「ああ、実施した意味があったな」と感じますね。360度フィードバックを実施したことで、日頃それほど話す機会のなかったメンバーから声を掛けられ、フィードバックの内容について相談を受けたこともありました

ネガティブな意見もたくさん出ていますが、もともと組織の透明度を上げるための施策なので、ネガティブ・ポジティブに関わらず実態が見えるようになったのは喜ばしいことだと思っています。360度フィードバックを実施しなかったら、こうした意見すら聞けなかったわけですから。

ネガティブな反応があったとしても、それは目的に向かって進んでいることの「証」である、と。

林様:そうです。前提として、我が社の組織の透明度がまだまだ低いからかもしれません。会社の設立以来、日本とマレーシア、役職者か否か、1000人の社員を抱える多くの部門といったさまざまなファクターが絡み合いつつも適切なチューンナップがされてこなかったので、今回の360度フィードバックで不安や不満を率直に回答してもらえてよかったです。

一方で、行動変容につなげる難しさも感じています。今回のフィードバックでショックを受けてくれたメンバーもいるのですが、このまま何もなければ数カ月後には忘れられてしまうかもしれない。日々の業務がある中で、どうやって行動変容まで求めていくのか。正直まだ答えは出ていません。

「導入をためらっている時間はない」と伝えたい

今後の展望や、検討していることがあれば教えてください。

林様:まずはフィードバックを受け取ったマネージャーたちが、一つでも自分の行動を改善できるようきっかけをつくること。それから、次回以降は対象者を広げることも検討しています。

というのも、現在、人事制度の見直しを行っているからです。管理職の昇格試験を設けることで、自ら手を挙げてキャリアを掴み取ってもらえるようにする予定です。フィードバックの対象者をマネージャー候補にまで拡大することで、マネージャーに必要な意識・感覚を養う機会にもなるのではと期待しています。

最後に、360度フィードバックの導入を検討されている皆さんに、ぜひアドバイスをお願いします。

林様マレーシアのローカルベンダーに話を聞くと、こうした多面評価の仕組みを導入している例がかなり少なかったのですが、「何をためらっているんですか。今すぐ取り組んだほうがいいですよ」と言いたいですね。すぐに変革には至らないかもしれませんが、360度フィードバックの仕組みがあるからこそ気づける声がありますし、会社として現場の声を聞く気があるんだ、というメッセージにもなります。

ありがとうございます。私たちも引き続き御社のディスカッションパートナーとして伴走させていただきたいと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。


インタビュアー

大川 徹 コンサルティンググループ コンサルタント
神戸大学国際人間科学部卒業後、メーカー系SI企業、総合人材サービス企業、大手私鉄、人材開発コンサルティング企業を経てコンサルティング事業の責任者としてシーベースに参画。多様な業界・職種での経験を活かし実践的なソリューションを提案。

 

 

NGK エレクトロデバイスマレーシア
事業内容:セラミックパッケージ・機能回路基板の製造
設立:1995年2月
社員数:1,015名(2022年7月現在)

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