セミナーレポート
「管理職だけが背負う組織」から脱却する
― 360度フィードバックで実現する“チームで支え合う文化づくり”
本記事は、2026年8月26日に開催したオンラインセミナー「『管理職だけが背負う組織』から脱却する ― 360度フィードバックで実現する“チームで支え合う文化づくり”」のレポートです。
管理職の負担増や「管理職になりたくない」という問題は、いまや多くの企業で共通認識になりつつあります。
そのため、業務の見直しや権限移譲、管理職研修など、さまざまな支援策が講じられています。
一方で、管理職支援を考える際に見落とされやすいのが、「なぜ仕事や判断が、管理職個人に集中し続けるのか」という視点です。
管理職本人のスキルを高めても、メンバーが主体的に動きにくい、安心して任せられない、互いの強みや役割が見えていないといった職場の状態が変わらなければ、仕事や責任は再び管理職へ集まっていきます。
つまり、これからの管理職支援では、「管理職をどう育てるか」だけでなく、管理職一人に依存しないチームをどうつくるかまで踏み込んで考える必要があります。
本セミナーでは、そのヒントとなる「シェアードリーダーシップ」の考え方をもとに、管理職一人が背負う状態から、メンバーそれぞれが強みを発揮し、チームで役割を担う状態へどのように移行していくのかを解説しました。
さらに、360度フィードバックを活用して、管理職自身が「手放せていないこと」に気づく方法や、心理的安全性を高める関係づくり、チームの強みを可視化・共有するための設計について、実際の企業事例も交えてご紹介しました。
管理職に「環境変化のしわ寄せ」が集中している
人材不足、働き方の多様化、テクノロジーの進化、グローバル化など、企業を取り巻く環境は大きく変化しています。
その対応を現場で担う管理職は、自らもプレイヤーとして成果を出しながら、部下育成や目標管理、チーム運営、メンバーのケアまで担うケースも少なくありません。
こうした「プレイングマネージャー化」が進み、仕事や判断、責任が管理職へ集中しやすくなっています。
管理職の負担を考える際には、単純に「業務量が多い」という問題だけを見るのではなく、仕事や責任が管理職個人に集中している構造そのものに目を向ける必要があります。
一方、シーベースの調査では、管理職は部下がリーダーシップを発揮することを歓迎しているものの、職場では役職に関係なくリーダーシップを発揮できる環境が十分に整っていないことも見えてきました。

では、管理職一人に責任や判断を集中させず、チーム全体で担う組織へ変えていくにはどうすればよいのでしょうか。
「一人で引っ張る」から「チームで担う」リーダーシップへ
そこで本セミナーでご紹介したのが、「シェアードリーダーシップ」という考え方です。
シェアードリーダーシップとは、管理職一人だけが判断やリーダーシップを担うのではなく、チームのメンバー一人ひとりが、状況や自身の強みに応じてリーダーシップを発揮する考え方です。

従来のリーダーシップでは、組織上の長である管理職に、指揮や判断、責任が集まりやすくなります。
一方、シェアードリーダーシップでは、ある場面では管理職が方向性を示し、別の場面では専門知識を持つメンバーが周囲をリードするなど、それぞれが強みを活かして成果をつくります。
これは、管理職の責任をなくすという意味ではありません。
これからの管理職に求められるのは、すべてを自分で抱える力ではなく、メンバーの力を引き出し、自分自身も周囲を頼れる関係性をつくる力だと考えています。
管理職だけが背負わない組織をつくる3つのポイント
本セミナーでは、チームでリーダーシップを担うための3つのポイントをご紹介しました。

1.「自分でやるしかない」から「チームでやる」へ
まず必要なのは、管理職自身のリーダーシップ観を見直すことです。
責任感の強い管理職ほど、「自分がやった方が早い」「管理職なのだから、自分が答えを持たなければならない」と考え、仕事を抱え込んでしまうことがあります。
しかし、マネジメントに求められることが複雑化するなか、一人ですべてを担うことには限界があります。
そのため、管理職支援においても、「任せ方」のスキルを教えるだけではなく、本人が自分の抱え込みや「手放せていないこと」に気づける機会を設けることが重要です。

2.「黙っていた方が安全」から「言ってもいい空気」へ
管理職が仕事を手放そうとしても、メンバー側が主体的に動けなければ、結局仕事は管理職へ戻ってきます。
そこで土台となるのが、心理的安全性です。
「こんなことを言ったら否定されるかもしれない」
「余計なことをしない方がいい」
「困っていても上司には相談しづらい」
こうした状態では、メンバーから提案や相談が生まれにくくなります。
反対に、自分の意見を伝えても受け止めてもらえる、困ったときには周囲に頼れるという安心感があれば、一人ひとりが主体的に動きやすくなります。

マサチューセッツ工科大学のダニエル・キム氏が提唱する「成功の循環モデル」では、「関係の質」が高まることで、一人ひとりの「思考の質」「行動の質」が変わり、結果にもつながっていく好循環が示されています。
管理職支援に置き換えて考えると、業務効率化やスキルアップだけでなく、メンバーが安心して提案・相談でき、管理職も周囲を頼れる関係性をつくることも重要です。
管理職から仕事をただ「渡す」のではなく、メンバーが安心して役割を担える土台をつくる。
管理職支援においては、業務効率化やスキルアップだけでなく、こうした「関係の質」まで含めて施策を設計する視点が求められます。
3.一人ひとりの強みや持ち味を共有する
もう一つのポイントが、チームメンバーそれぞれの強みを理解することです。
管理職一人ですべての領域をカバーしようとすれば、どうしても限界があります。
しかしチームには、それぞれ異なる経験や得意分野、考え方を持ったメンバーがいます。
「この領域ならこの人に任せられる」「この場面では、この人の強みが活きる」という共通認識があれば、役割分担の選択肢も広がります。
一人の優秀な管理職ですべてをカバーするのではなく、一人ひとりの持ち味を足し合わせてチーム全体でカバーする。
そのためには、個人の強みを可視化するだけでなく、チーム内で共有し、役割分担を考える材料として活かせるところまで設計することがポイントになります。
360度フィードバックは「手放すこと」に気づく鏡になる
こうした変化を促す一つの手段が、360度フィードバックです。
360度フィードバックは、上司・同僚・部下など、日頃一緒に働く人から自身の日常的な行動についてフィードバックを受ける、いわば「仕事中の自分を知る鏡」です。
たとえば、本人は「十分に部下へ仕事を任せている」と考えていても、周囲からは「いつも忙しそう」「もっと任せてほしい」「仕事の状況が共有されていない」と見えているかもしれません。
本人と周囲の認識の違いを知ることで、自分では気づきにくかったマネジメントの癖が見えてきます。
さらに、「なぜ自分は仕事を手放せないのか」と振り返ることで、「自分でやった方が早い」「失敗させてはいけない」といった自身の考え方にも目を向けることができます。
360度フィードバックは、できていないことを指摘するためではなく、自分が何に注力し、何を周囲に任せられるのかを考える材料として活用できます。
フィードバックへの「感謝」が、次の対話を生む
360度フィードバックは、結果を受け取って終わりではありません。
むしろ、その後のコミュニケーションこそが重要です。
たとえば、フィードバックをくれたメンバーに対して管理職本人から、
「回答してくれてありがとう」
「もらった意見を受けて、ここを変えてみようと思う」
と伝える。
するとメンバー側にも、「自分の意見をきちんと受け止めてもらえた」という実感が生まれます。
一度でも「言っても大丈夫だった」という経験ができれば、次の相談や提案もしやすくなります。
つまり、フィードバックへの感謝は単なるお礼ではありません。
管理職とメンバーの間に、率直に意見を伝え合える関係をつくるきっかけになります。
360度フィードバックを対象者本人だけの振り返りで終わらせず、感謝や対話まで含めて設計することで、心理的安全性のあるチームづくりにもつなげることができます。
管理職だけでなく、「チーム全員の強み」を可視化する
さらに、360度フィードバックの対象を管理職だけに限定せず、チーム全体へ広げて活用する方法もあります。
従来の360度フィードバックでは、
「管理職の足りない部分を見つける」
「弱みを改善する」
といったギャップアプローチが中心になりがちでした。
しかし、チームでリーダーシップを担う組織を目指すのであれば、「誰に何が足りないか」だけでなく、「誰がどんな強みを持っているか」にも目を向ける必要があります。
自分では気づいていない強みを、周囲が評価していることもあります。
一人ひとりの強みをチームで共有できれば、「この仕事は○○さんの強みが活きそう」「ここは自分が担える」といった役割分担もしやすくなります。
360度フィードバックを、個人の課題発見だけではなく、チームに存在する強みを見つけ、活かすための仕組みとして活用することもできるのです。

実践事例:多様な個性の力を結集するマネジメントへ
セミナー後半では、国内大手製造業における取り組みをご紹介しました。

同社では、グローバル化や多様な人材の活躍推進を背景に、従来の管理統制型マネジメントから、メンバーそれぞれの個性や強みを引き出すマネジメントへの転換が求められていました。
そこで、管理職を対象に360度フィードバックと研修を組み合わせた施策を実施。
「多様性を大切にする考え方」や「個性を活かすマネジメント」など、目指す姿を具体的な行動として捉えられる設問を設定しました。
さらに研修では、該当項目で高い評価を得ていた管理職へインタビューし、実際に現場で行っている関わりや行動を参加者へ共有しました。
360度フィードバックを「自分の課題を知る」だけで終わらせず、自社のなかにある“うまくいっているマネジメント”を見つけ、組織に広げていくために活用した事例です。
理想像を一方的に教えるのではなく、自社の実践から学ぶ。
360度フィードバックには、こうした組織内の学びを生み出す活用方法もあります。
「管理職を変える」だけではなく、「関係性を変える」
管理職の負担軽減というと、業務量の削減や権限移譲、マネジメント研修などに目が向きがちです。
もちろん、これらも必要な取り組みです。
ただし、「メンバーを頼れない」「誰に何を任せればいいかわからない」「メンバー側も意見を言いづらい」といった関係性が変わらなければ、仕事や責任は再び管理職へ戻ってきます。
だからこそ、管理職支援では管理職本人だけを見るのではなく、チーム全体の関係性や役割の持ち方まで含めて考えることが求められます。
360度フィードバックも、結果を返して終わるのではなく、内省や対話、強みの共有まで含めて設計することで、個人の行動変容だけでなく、チームで支え合う関係性をつくるための仕組みとして活用できます。
まとめ
今回のセミナーでは、管理職の負担を「管理職本人の能力」の問題だけで考えるのではなく、管理職一人に仕事や責任が集中している組織の構造から見直す考え方をご紹介しました。
これからの管理職に必要なのは、すべてを自分で背負うことではありません。
自分が担うべきことに集中し、メンバーの強みを活かし、ときには周囲を頼る。そのためには、管理職本人の意識や行動を変えるだけでなく、チーム側にも「役割を担える状態」をつくっていく必要があります。
人事が管理職支援を施策として考える際にも、重要なのは、管理職本人への働きかけだけで終わらせないことです。
- 「一人でやる」から「チームでやる」へ、リーダーシップのあり方を見直す機会をつくる
- 安心して相談や提案ができる関係性づくりを支援する
- 一人ひとりの強みを共有し、チームで役割を分かち合える状態をつくる
360度フィードバックも、結果を返して終わるのではなく、こうした変化を促すための「気づき」「対話」「強みの共有」の機会として活用することができます。
「管理職をどう育てるか」だけではなく、「管理職一人に依存しないチームをどうつくるか」。
管理職支援をこの視点から捉え、施策を設計していくことが、、管理職だけが背負わず、一人ひとりが力を発揮できる組織づくりへの第一歩になります。
管理職支援に360度フィードバックを活用するには
シーベースでは、360度フィードバックシステム「CBASE 360°」を通じて、管理職の行動特性や周囲との認識ギャップの可視化から、結果の読み解き、対話・行動変容につなげる施策設計まで支援しています。
「管理職に仕事や責任が集中している」「研修だけでなく、チームの関係性まで含めて支援したい」とお考えの方は、ぜひ以下をご覧ください。
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