マッキンゼーの7Sとは? 導入メリットやフレームワークを分かりやすく解説
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企業が成長し続けるためには、戦略や組織構造だけでなく、企業文化や人材のスキルもバランスよく整える必要があります。そのための指針として、多くの企業が参考にするのが「マッキンゼーの7Sフレームワーク」です。このフレームワークは、組織全体の最適化を図るために設計されており、人事戦略の策定にも有効です。本記事では、7Sフレームワークの概要とその活用方法について詳しく解説します。
マッキンゼーの7Sとは
マッキンゼーの7Sとは、米国の大手コンサルティングファーム「マッキンゼー・アンド・カンパニー」が提唱したフレームワークです。7Sは以下の7つの要素から構成され、企業の成長や変革を促進するための指針となります。
7Sの要素
マッキンゼーの7Sは、組織の構造的要素(ハード面)と文化・人的要素(ソフト面)に分類されます。企業が成長するためには、これらの要素をバランスよく整え、戦略的に活用することが求められます。
ハード面:組織構造に関する要素
1. 戦略(Strategy)
戦略は企業の方向性を示し、競争優位を確立するための指針となります。市場環境の変化に適応するため、戦略は継続的に見直し、調整される必要があります。成功する戦略は、企業のビジョンと一致し、実行可能であることが重要です。また、短期的な利益だけでなく、中長期的な成長を見据えた設計が求められます。
2. 組織構造(Structure)
組織構造は、企業の指揮命令系統や各部門の役割分担を定める要素です。適切な組織構造を整えることで、業務の効率化と意思決定の迅速化が可能になります。トップダウン型、フラット型、マトリックス型など、組織の形態は企業の規模や事業内容に応じて選択されるべきです。柔軟な構造にすることで、環境変化に適応しやすくなります。
3. システム(System)
システムは、企業の業務プロセスや管理手法を指します。例えば、人事評価制度、財務管理システム、社内コミュニケーションツールなどが含まれます。適切なシステムの整備により、業務の標準化と生産性の向上が実現されます。また、デジタル化が進む現代では、テクノロジーの活用が企業の競争力を高める重要な要素となります。
ソフト面:人に関する要素
4.共通の価値観(Shared Value)
共通の価値観は、企業の文化や理念を指し、組織全体の行動指針となります。経営層だけでなく、全従業員が共通の価値観を理解し、それに基づいた意思決定を行うことで、組織の一体感が強まります。企業のミッション・ビジョン・バリューを明確にし、日々の業務の中で浸透させることが求められます。
5. スキル(Skill)
スキルとは、従業員が持つ知識や専門能力のことを指します。企業が成長し続けるためには、従業員のスキルアップが不可欠です。研修やOJTを通じてスキルを強化し、最新の知識を取り入れることで、企業の競争力を維持できます。特に、デジタルスキルやマネジメントスキルの向上が、組織の変革を成功させる鍵となります。
6. 人材(Staff)
人材は、企業の最も重要な資産の一つです。適材適所の人員配置を行うことで、従業員の能力を最大限に引き出すことができます。採用戦略の工夫や、社内のキャリアパスを明確にすることで、社員のモチベーション向上や定着率の改善につながります。優秀な人材を確保し、育成するための仕組みが必要です。
7. 組織風土(Style)
組織風土は、企業の意思決定プロセスやリーダーシップの在り方を示します。風土が柔軟であれば、変化に対応しやすく、イノベーションを促進することができます。トップダウン型の強いリーダーシップか、ボトムアップ型の現場主導型か、企業の風土に適したリーダーシップスタイルを確立することが重要です。
7Sフレームワークを活用するメリット
7Sフレームワークは、組織運営のあらゆる側面を体系的に評価し、バランスよく改善するための強力な手法です。経営戦略の実行性を高めるだけでなく、組織文化の形成やリーダーシップの強化など、多様な場面で役立ちます。以下に、その具体的なメリットを説明します。
組織の全体最適を実現できる
7Sフレームワークは、組織の各要素が相互に影響し合うことを前提としています。そのため、特定の要素のみを強化するのではなく、全体のバランスを考慮した改善が可能です。これにより、部分最適に陥ることなく、持続可能な組織成長を実現できます。
経営戦略と組織の整合性を向上できる
企業の戦略が実行されるためには、それを支える組織構造やシステムが適切に設計されている必要があります。7Sフレームワークを活用することで、戦略と組織の各要素の整合性を高め、実効性のある戦略運営が可能になります。
組織文化の醸成と価値観の共有が促進される
組織の成長には、共通の価値観の浸透が不可欠です。7Sフレームワークでは、価値観(Shared Value)を中心に据え、組織の風土や文化を形成する仕組みを整えます。これにより、従業員のエンゲージメントが向上し、企業の一体感が強まります。
変革の方向性を明確化しやすい
企業が変革を遂げる際、どの部分に課題があるのかを明確にすることが重要です。7Sフレームワークを活用することで、組織のどの要素を優先的に見直すべきかが分かり、的確な変革を進めることができます。
人材育成とスキル開発の指針が得られる
スキル(Skill)と人材(Staff)の要素を通じて、組織が求める人材像を明確にし、従業員の成長を支援する仕組みを構築できます。これにより、適切な人材配置や研修プログラムの設計が可能になります。
7Sフレームワークの実施手順
7Sフレームワークを活用する際は、体系的なアプローチを取ることが重要です。各ステップを丁寧に実施することで、組織の改善を計画的かつ持続的に進めることができます。以下の手順に沿って進めることで、効果的な組織変革が可能となります。
1. 現状の分析
組織の現状を把握するために、各7S要素について診断を行います。経営層や従業員へのヒアリング、業務フローの可視化、データ分析などを通じて、組織の強み・弱みを明確にします。現状の課題を正確に把握することが、適切な施策の策定につながります。特に、組織構造やスキルの分布を評価することで、適切な改善策の方向性を決める基盤を作ることができます。
2. 問題の明確化
現状分析の結果をもとに、組織の課題を特定します。戦略と組織構造のミスマッチ、共通の価値観の不明確さ、人材育成の不足、非効率な業務プロセスなど、問題点を具体的に洗い出します。課題を明確化することで、組織全体の方向性を統一し、関係者が一丸となって改革に取り組めるようになります。
3. 目標設定
組織改革の目標を設定し、7Sの各要素がどのように改善されるべきかを明確にします。短期的な目標と長期的な目標を設定し、定量的な指標(KPI)を活用することで、進捗を適切に測定できます。例えば、「従業員エンゲージメントを10%向上させる」「組織の意思決定スピードを30%短縮する」などの具体的な目標を定めます。
4. 改善策の策定
各課題に対する具体的な改善策を策定します。例えば、戦略の見直しや組織構造の変更、人材育成プログラムの強化、評価制度の改善などが考えられます。改善案は、各部門の意見を反映しながら策定し、実行可能なプランに落とし込むことが重要です。また、実施に向けた優先順位を決め、段階的に実行することで、変革をスムーズに進められます。
5. 組織構造の見直し
事業の成長や戦略の変更に合わせて、組織の構造を適切に再編します。フラットな組織構造の導入、マトリックス組織の活用、権限委譲の強化など、企業のニーズに応じた最適な構造を設計することが求められます。組織構造の変更は、社員の役割と責任の明確化を促し、業務の効率化と意思決定の迅速化につながります。
6. システムの整備
業務プロセスや評価制度、情報共有システムなどを最適化し、効率的な組織運営を支援する仕組みを整えます。特に、デジタルツールの導入や業務の自動化が進む中で、適切なシステムの整備が求められます。また、人事評価システムや目標管理ツールを活用することで、組織の透明性を高め、適正な評価が可能となります。
7. スキル開発
従業員の成長を促進するために、スキル開発の計画を策定します。専門スキルの向上だけでなく、リーダーシップやコミュニケーション能力の強化にも注力することが重要です。研修プログラム、メンタリング制度、E-learningの導入など、多様な方法を活用し、社員の能力を最大限に引き出す仕組みを構築します。
8. リーダーシップスタイルの強化
経営層や管理職が組織変革を主導できるよう、リーダーシップスキルの強化を図ります。トップダウン型とボトムアップ型のバランスを取りながら、従業員が自発的に行動できる環境を整えることが重要です。リーダー層のトレーニングやフィードバックの仕組みを取り入れ、持続的なリーダーシップ開発を行います。
9. 共通の価値観の浸透
企業理念やビジョンを全社員に浸透させるための施策を実施します。社内イベントやワークショップを活用し、企業の価値観を具体的な行動に落とし込む機会を提供します。また、日常業務の中で価値観を実践する仕組みを構築し、社員が企業の目標と自身の役割を関連付けられるようにします。
導入の注意点
7Sフレームワークを導入する際には、組織の現状や環境を十分に考慮することが重要です。部分的な改善ではなく、全体最適の視点で進めることで、より高い効果が得られます。また、導入後も定期的に評価と見直しを行い、変化する市場や組織の状況に適応できるようにすることが求められます。
1. 短期的な成果を求めすぎない
7Sフレームワークの導入には時間がかかります。短期間で劇的な変化を期待すると、焦りから場当たり的な施策になりかねません。長期的な視点を持ち、段階的に変革を進めることで、組織に無理のない持続可能な改善を実現できます。
2. 部門間の連携を強化する
組織の7つの要素は相互に影響を与え合うため、特定の部門だけが変革を進めても効果が薄れます。全社的な連携を意識し、部門間のコミュニケーションを円滑にすることで、組織全体の一体感を高めることが重要です。
3. 価値観の共有を徹底する
共通の価値観(Shared Value)が組織全体に浸透していなければ、施策の実行が困難になります。ビジョンやミッションを明確にし、従業員と継続的に対話することで、企業の方向性を組織全体で共有しやすくなります。
4. 既存のシステムとの整合性を考慮する
新たな評価制度やシステムを導入する際には、既存の業務プロセスとの整合性を考慮することが必要です。特に、ITシステムや評価制度の変更が急激すぎると、従業員の混乱を招く可能性があるため、スムーズな移行計画を立てることが重要です。
5. 経営層の関与を確保する
組織変革には、経営層の積極的な関与が欠かせません。経営陣が自ら7Sフレームワークを理解し、リーダーシップを発揮することで、組織全体に変革の意識を根付かせることができます。
7S以外で活用できるフレームワーク
7Sフレームワークは組織改革において有効ですが、他のフレームワークと組み合わせることで、より多角的な分析や戦略立案が可能になります。以下のフレームワークを活用することで、より実践的で精度の高い組織改革が実現できます。
SWOT分析
SWOT分析は、企業の内部環境(Strengths: 強み、Weaknesses: 弱み)と外部環境(Opportunities: 機会、Threats: 脅威)を整理し、戦略の方向性を明確にする手法です。7Sフレームワークと組み合わせることで、現状の強みを活かしつつ、リスクを軽減しながら組織改革を進めることができます。
参考:SWOT分析とは?やり方や分析例、人材育成への活用法をわかりやすく解説
PEST分析
PEST分析は、政治(Political)、経済(Economic)、社会(Social)、技術(Technological)の4つの視点からマクロ環境を分析するフレームワークです。特に、外部環境の変化に柔軟に対応するための戦略策定に有効で、7Sフレームワークと併用することで、組織改革の方向性をより明確にできます。
参考:PEST分析とは?基本のフレームワークとやり方をわかりやすく解説
3C分析
3C分析は、顧客(Customer)、競合(Competitor)、自社(Company)の3つの観点から市場を分析する手法です。組織改革の際に、競争環境や顧客ニーズを踏まえた戦略を立案するのに役立ちます。7Sフレームワークと組み合わせることで、企業の市場適応力を向上させることが可能です。
まとめ
マッキンゼーの7Sフレームワークは、組織の変革を進めるうえで有効な指針となります。特に、人事評価制度の見直しを検討する際には、7Sを活用することでより戦略的な組織運営が可能となります。また、7Sフレームワークと他のフレームワークを組み合わせることで、より実践的な戦略を策定しやすくなります。ぜひこのフレームワークを活用し、組織の最適化に役立ててください。
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