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【セミナーレポート 7月6日(火)実施 第5回】戦略的360度フィードバック実現の条件 ~今、議論しておくべき360度フィードバックの論点

【CBASE U 公開講座】
半蔵門オフィス×株式会社シーベース共催
人事担当者が押さえるべき
戦略的360度フィードバック実現の条件
~今、議論しておくべき360度フィードバックの論点

半蔵門オフィス代表 南雲道朋氏と、株式会社シーベース 代表取締役 深井幹雄氏による公開講座「人事担当者が押さえるべき戦略的360度フィードバック実現の条件」の最終回となる第5回では、「今、議論しておくべき360度フィードバックの論点」についてディスカッションが行われました。今回の5回シリーズの講座では、米国の最新のハンドブック『Handbook of strategic 360 Feedback』(2019年版)をベースに、その内容の紹介および議論が行われています。

トピック1 ダイバーシティ&インクルージョン(女性活躍推進)と360フィードバック

はじめに南雲氏は、2013年ごろに行われていた議論を紹介しました。それは360度フィードバックや価値観調査では、男女の傾向の違いが見られるというものです。コンピテンシーの傾向は、男性は組織へのコミットメントや概念化志向が強く、女性は秩序やクオリティへの関心や対人関係、顧客サービスを重視する傾向にありました。そのため女性活躍では男女の傾向の違いを活かすやり方がいいのではないかといった議論がありました。では、こうした議論の仕方は正しいのか。米国のハンドブックは「男女平等へのハードルは偏ったステレオタイプな考え方にあり」と述べています。

多様性が職場の成果にプラスの影響を与えることは明らかです。しかし、男女の平等は特に組織の上層部において進んでいません。実証研究によれば、女性のほうが昇進昇格要件を厳しく適用されがちであり、また、女性は、業績評価は男性より高いのに昇進の可能性に関する評価は男性のほうが高くなっています。なぜそうなるのか。

「理由の一つは、男女の特性とリーダーシップとの関係についてなされてきた議論にみられます。『男性は主体的で、女性は共同的』→『リーダーシップは主体的なもの』→『だからリーダーには女性は向かない』のように、『である』論は『であるべし』論に容易に転化してしまう。要するに、ステレオタイプ的な見方が害を及ぼしてしまうのです」

そのため、インクルッシブな職場をつくるには、常にステレオタイプな見方を是正する動きを組み込まなければなりません。インクルッシブな職場をつくるうえでリーダーに求められる行動は何か。三つのポイントがあります。一つ目はメンター関係を築くこと。男女間のクロスメンターは有効です。二つ目は盟友関係を築くこと。強者側が不平等を認め、積極的に弱者の立場に立ちます。三つ目はメンター関係および盟友関係の主導者となること。特に組織の上層部に主導者が実践できれば変化は進みます。

では、それを360度にどう組み込むのか。まず大事なことは、ジェンダーインクルッシブな行動を意識させ、360度で測定し、多様性の価値を広く組織に伝達することです。そのうえで「メンターシップを継続的に奨励する」「効果的な盟友行動を見出し、検証する」「インクルッシブな影響力のある人材を活用する」「性別ステレオタイプへの警戒を維持する」ことを重視し、360度の研究も継続させます。そのうえで、インクルッシブで魅力的な文化をつくるには、リーダー像、人事制度、人事インフラのすべての要素を連動させていく必要があります。

深井氏は「こうしたステレオタイプ的な見方は、他にもゆとり世代、若者世代などに当てはまる。その中でも男女の違いは型にはめられやすい。型にはめることによって、いろいろな価値に気づけないことがある。組織開発の大事な観点として、それぞれの特徴を見える化し、その違いを認識できるプロセスを持ち、それを受け止める土台をつくることが大事」と述べています。

また、南雲氏は「なぜステレオタイプの見方をするのかというと、情報が少ないから型に当てはめてしまう。360度で一人ひとりの情報を得ることにより、ステレオタイプから抜け出せる」と述べました。

トピック2 データアナリティクス手法の取り入れ方

米国ハンドブックでは、360度フィードバックデータは格好の分析対象と述べています。360度はリーダーを多角的に測定でき、また、成功しているリーダーの秘訣を特定でき、さらに組織の機能不全の要因の特定にもつながるからです。

では、タレントマネジメントの局面でのアナリティクス活用のポイントは何か。一つ目は役員・幹部選抜。ただし妥当性の検証は不可欠です。二つ目は昇進・昇格。誰による、どの項目の評価が将来の活躍を予測するのかを分析します。三つめは後継者計画およびワークフォースプランニングです。開発型、戦略型、家族型、徹底型など人材のタイプ分類を活用します。四つ目は学習と人材開発。個人および組織レベルで課題を特定し、改善の測定ができます。五つ目は進歩の測定です。経年変化を見ることができます。

次に、活用できるアナリティクス手法ですが、推奨されている四つの手法があります。一つ目は非構造化データ(自由記述回答)分析です。ハイパフォーマーにおける特徴と特徴の組合せの可視化もできます。二つ目は連鎖(影響)の分析です。どの評価項目の高低がパフォーマンスにつながるのかを分析します。

三つめはネットワーク分析です。社会ネットワークの範囲とパフォーマンスの関係を探り、インパクトの範囲もパフォーマンスの評価要素に含めて分析します。南雲氏は「これは今もっともホットな分析ではないか。特にリモートワークでは誰と誰がコミュニケーションしたのかが記録されるので、それとパフォーマンスの関係を探ることができる」と述べています。四つ目は360度におけるレポーティングとメッセージの可視化です。特に「記憶に残りやすいこと」「正確であること」「メッセージが明解であること」を重視します。

では、どのように取り組むか。南雲氏は「大事なことは専門家に任せる前に分析手法のイメージを把握できるようになっておくこと。そして、アナリティクスの基本を押さえ、シンプルな手法に置き換えて、自分たちで実践・議論する。偏差値やグループにおける差の分析、成功確率などを活用するべき」と述べています。

また、データアナリティクスにおいて南雲氏が特に勧める手法があります。それは360度データに基づくハイパフォーマー判定機をつくることです。それも回帰分析といった高度な計算ではない、簡単な計算でハイパフォーマーの確率を求めることができるナイーブベイズ手法の活用を勧めています。

「業績ランクや5段階回答のデータを、1か0(イチゼロ)に置き換えることで、シンプルに人材を判断できるようになります。例えば、5段階回答で4以上の人を1、それ以外をゼロとして集計すると、高業績となる人の確率係数を求めることができます。これにより高業績に対し、もっとも障害となる行動などがわかるようになるのです」

最後に深井は「過去にネットワーク分析を社内で行ったが、Slackのデータと360度のデータを突き合わせると、組織横断をしながらリーダーシップを発揮できているタイプと、限られたコミュニティの中でリーダーシップを発揮できているタイプの違いが見られた。360度は個人のフィードバックがメインで考えられがちだが、組織全体の傾向を見ることもできる。事業部ごとの違いを見たり、回答者のタイプで問題意識が違っていないかを見ることでさまざまな示唆が得られる」と述べました。

トピック3 倫理的・法的な側面からの留意点

360度フィードバックには倫理的な側面からの留意も必要になります。ハンドブックでは米国心理学会の倫理規定が参考になると述べています。その原則は三つです。

一つ目は「害を成さない」。適切なプログラム設計、運営、フィードバックにより、クライアントや関係者への危害を回避します。特に対象者が自分の結果を解釈することを支援するメカニズムが提供されないと、弊害が生じる可能性があります。二つ目は「インフォームド・コンセント」。どのような情報が収集され、どのように使われるのかを開示することが重要です。三つ目は「機密保持」。暗黙にまたは明示的に約束されているかどうかに関わらず、機密性を保持することが大事であり、また、予見できない状況の変化にも備えることが求められます。

質疑応答

深井:これまでで一番多かった質問です。360度は人材開発および評価、組織開発、タレントマネジメントまですべてに活用できます。ただし、これを導入するにあたっては利用目的と結果の共有範囲を段階的に広げることが重要になります。最初は個人の開発が目的であり、レポートは本人にしか返しません。次の段階は個人に加え組織開発でも利用し、レポートは上司とも共有します。さらに次の段階では本人と上司に加え、人事でも共有し、人材評価を議論する材料としても活用します。最終段階はパフォーマンス評価であり、人事の意思決定にも活用されます。このように組織へのフィードバック文化を徐々に浸透させていくことで、評価にも使えるようになります。この質問については、第1回セミナーの動画および資料に詳細がありますので参照ください。

Q:360度フィードバックの品質を担保するためには?

深井:これは次に多かった質問です。品質の議論では対象者へのケア、理解促進へのサポートといった議論が多くなりますが、いかに回答者からよい回答を得ていくかということも大事になります。品質を保つために大事なことは以下の10のステップをきちんと回すことです。ここをきちんと回されているお客さまは大変有効な活用ができています。

「準備(設問、回答者選定)→回答(社内説明会、回答方法)→フィードバック(フィードバックレポート、読み解き方)→改善(行動改善の明確化、感謝コメント、組織レポート)→定着(改善の定着)」

360度フィードバックは結果を集めて終わりではなく、準備段階から定着までを含めてのフィードバックのループを、対象者や回答者も含めていかに有効に回せるかが問われます。この10のステップによって、360度フィードバックはよりパワフルなツールになります。

360度評価につきましては、下記の記事もご参照ください。
参考:360度評価とは?多面評価を採用するメリットとデメリット

半蔵門オフィス 代表
南雲 道朋
東京大学法学部卒、日系大手電気通信メーカーのソフトウェア開発企画部門に勤務後、外資系コンサルティング会社にて現場再生のコンサルティングに従事。
1998年以降、マーサージャパン、HRアドバンテージ、トランストラクチャなどにおいて人事・組織に関するコンサルティングや関連するウェブソリューション開発をリード。その経験の総まとめのために、2018年に半蔵門オフィスを設立。
最新の著書に、『データ主導の人材開発・組織開発マニュアル』(経営書院)(2021/3)がある。情報処理学会会員。

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株式会社シーベースでは、HRテクノロジーを中心とした人材開発論・組織開発論を学びたい社会人向けの講座「CBASE U」や、360度評価をはじめとするサービス紹介のセミナーなど、様々な講座・企画を実施しております。


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