静かな退職とは?企業が抱えるリスクと防止のための対策を徹底解説!
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「辞めてはいないが、やる気を失っている」——そんな従業員の静かな退職(Quiet Quitting)が、組織にじわじわと悪影響を与えています。エンゲージメントの低下や職場文化の劣化は、やがて優秀人材の流出や業績低下へとつながりかねません。本記事では、静かな退職の定義や背景、日本企業特有の構造的課題、そして見逃してはならないサインや対策方法までを網羅的に解説します。
目次
静かな退職とは
静かな退職とは、従業員が職場に在籍し続けながらも、仕事への積極性や成長意欲を失い、必要最低限の業務のみにとどめる働き方のことを指します。実際には退職を申し出ているわけではないため表面化しづらく、企業側が気づきにくいのが特徴です。背景には、働き方の価値観の変化やエンゲージメントの低下があり、早期の対応が求められます。ここでは、混同されやすい「サイレント退職」との違いについても整理していきます。
サイレント退職との違い
サイレント退職は、企業側の働きかけによって従業員が退職を余儀なくされる状況を指し、配置転換や不当な人事評価などで意図的に職場に居づらくするケースが典型です。一方で静かな退職は、従業員が自ら職場との心理的距離を置き、業務への関与度を下げる状態です。どちらも退職に関係しますが、主導権が企業側にあるか、従業員側にあるかという点で大きく異なります。正確に区別することで、対策の方向性も変わってきます。
静かな退職が増加する背景
静かな退職が広がりを見せる背景には、働き方やキャリア観の変化だけでなく、職場の人間関係やマネジメント構造の変質も深く関係しています。特に、リモートワークの浸透や人事制度の硬直化は、従業員のエンゲージメントを低下させる要因となっています。ここでは、静かな退職を引き起こす主要な背景として、価値観の変化、組織との関係性の希薄化、そしてエンゲージメント低下の3つの観点から掘り下げていきます。
働き方に対する価値観の変化
Z世代やミレニアル世代を中心に、「出世のために働く」から「自分の時間や健康を守る働き方」へと価値観が変化しています。過剰な労働や感情労働を避け、仕事とプライベートをきっちり分けたいという意識が強まっていることから、最低限の業務にとどめる静かな退職というスタンスが広がっています。このような変化を単なる怠慢と捉えるのではなく、時代の流れとして理解することが、適切な対策を講じる第一歩となります。
組織と従業員の関係性の希薄化
テレワークの普及や対面機会の減少により、上司や同僚との非公式なコミュニケーションが激減しました。この結果、従業員が職場における心理的なつながりや一体感を感じにくくなり、孤立を深める傾向があります。信頼関係の構築が難しくなることで、業務に対する当事者意識や貢献意欲が薄れ、静かな退職の要因となるケースが増えています。企業文化の希薄化にもつながるため、早急な見直しが求められます。
従業員エンゲージメントの低下
エンゲージメントとは、従業員が自発的に仕事へ取り組む姿勢や、組織への愛着を意味します。評価制度の不透明さや、やりがいの実感の乏しさが続くと、従業員は「期待されていない」と感じ、仕事への関心を失いやすくなります。その結果、静かな退職状態に陥る可能性が高まります。エンゲージメントの低下は数字に表れにくいため、定期的なアンケートや対話を通じて小さな兆候を察知し、先手を打った対策が不可欠です。
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静かな退職が起こる日本企業の特徴
静かな退職はあらゆる職場で起こり得ますが、特に日本企業においては構造的な要因によって起こりやすい傾向があります。年功序列や一括採用、画一的な評価制度といった日本的雇用慣行が、従業員の意欲や当事者意識を損なう場面が多く見られます。また、働き方の多様化に対応しきれていない企業では、従業員との価値観のズレが蓄積しやすくなります。ここでは、静かな退職が生じやすい日本企業の特徴を掘り下げていきます。
年功序列型の人事制度
日本企業に多く見られる年功序列型の人事制度は、勤続年数や年齢によって評価や役職が決まる傾向があります。この仕組みでは、成果を出してもすぐに評価されない、挑戦しても報われないと感じる若手が静かな退職に陥りやすくなります。また、定型的なキャリアパスしか用意されていない場合、将来への希望が持てず、モチベーションが低下します。柔軟な評価制度と選択肢のあるキャリア設計が、静かな退職対策として求められています。
トップダウン型マネジメント
多くの日本企業では、意思決定が上層部に集中し、現場の声が届きにくいトップダウン型の文化が根強く残っています。このような環境では、従業員が「自分の意見は聞いてもらえない」「評価の基準が不明確」と感じ、次第に職場への関与を減らす傾向が強まります。とくにリーダーとの定期的な1on1面談やフィードバック機会が不足していると、静かな退職のリスクが高まります。現場との対話を重視する姿勢が、対策の要になります。
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静かな退職が企業にもたらす3つのリスク
静かな退職は、従業員の内面的な離脱にとどまらず、企業活動全体に深刻な影響を及ぼします。職場の活力や生産性を低下させ、健全な組織文化を蝕むだけでなく、優秀な人材の流出を招く恐れもあります。これらのリスクは見えにくく、放置されがちですが、長期的に企業競争力を奪う重大な問題です。ここでは、静かな退職が引き起こす3つの代表的なリスクについて個別に整理し、対策の必要性を明らかにしていきます。
従業員の生産性の低下
静かな退職状態の従業員は、自ら課題を見つけて動く姿勢を失い、与えられた業務を最低限こなすだけになります。その結果、業務のスピードや質が落ち、全体の生産性にも悪影響を及ぼします。加えて、自発的な提案や協力が生まれにくくなり、チーム内でのイノベーションや柔軟な対応力も損なわれていきます。こうした状態が常態化すると、企業としての成果達成力が大きく損なわれるため、静かな退職への早期対応が必要不可欠です。
健全な職場文化の崩壊
静かな退職が広がると、「やる気がないのが当たり前」という空気が職場に浸透し、健全な職場文化が崩れていきます。本来、互いに刺激を与え合いながら成長するチームが、無関心と自己防衛の集まりへと変質してしまうのです。努力しても報われない、頑張らなくても評価は変わらないという認識が広がると、真面目に働く人材の士気まで奪われます。こうした文化の劣化は、長期的に組織の活力を削ぐ深刻なリスクとなります。
優秀な人材の離職
意欲的に働く優秀人材は、静かな退職が蔓延する職場に失望しやすく、離職を選ぶ傾向があります。周囲の低モチベーションに影響され、「この職場では成長できない」と感じることがきっかけになります。一方で、静かな退職状態にある人材は離職を選ばず残るため、組織全体の力が次第に弱まっていきます。人事にとっては、人材の流出を食い止めるだけでなく、モチベーションの高い社員が「辞めたくならない環境」を整える対策が必要です。
静かな退職のサインを早期に察知する方法
静かな退職は表面上の問題行動が少なく、企業やマネージャーが気づかないうちに進行するケースが多く見られます。対応が遅れると、職場のモチベーション低下や人材の流出といった深刻な事態に発展しかねません。だからこそ、早い段階で兆候に気づき、必要な対話や支援を行うことが重要です。ここでは、仕事への姿勢や勤務態度、対人関係、成果物といった複数の視点から、静かな退職を見極めるための具体的な観察ポイントを整理します。
仕事への積極性の消失
静かな退職状態の従業員は、自発的な発言や提案が少なくなり、会議や日常業務でも必要最低限のやり取りしか行わなくなる傾向があります。また、成長の機会や新しいチャレンジに対して関心を示さなくなることも特徴のひとつです。以前は積極的だった人物が、ある時期から受け身の姿勢に変わった場合は、内面的な距離感の変化が生じている可能性があります。こうした行動の変化は、静かな退職の初期サインとして見逃してはなりません。
同僚や上司との関係性の希薄化
職場内での人間関係の変化も、静かな退職の重要な兆候です。チーム内での雑談や協力への参加が減り、上司や同僚との接触を避けるようになる場合、心理的な距離を置いているサインといえます。とくに、以前は積極的に他者と関わっていた従業員が急に孤立傾向を見せ始めたときは要注意です。こうした関係性の断絶は、エンゲージメントの低下だけでなく、企業文化全体の分断にもつながる可能性があるため、早めの対話が対策として重要です。
勤務態度の変化
勤務態度の変化は、静かな退職を察知するうえでの重要なサインのひとつです。具体的には、遅刻や早退が増える、始業時に無気力な様子を見せる、報連相が減るといった行動が見られるようになります。とくに、以前は時間管理が正確で責任感が強かった従業員が、急に勤務姿勢を崩し始めた場合には注意が必要です。こうした態度の変化は、内面的に職場から距離を取っている兆候である可能性があり、対話による早期対応が対策として有効です。
成果の質の低下
静かな退職状態にある従業員は、最低限の業務にとどまり、成果の質にも徐々に影響が出てきます。納期ギリギリの提出、内容の粗さ、以前よりも工夫や改善が見られないなど、アウトプットの変化は見逃せないサインです。本人は淡々と業務をこなしているようでも、仕事への関心や責任感が薄れていることが原因である場合があります。成果レベルの変化は比較的後から現れるため、勤務態度とあわせて総合的に捉えることが重要です。
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静かな退職を防ぐための対策
静かな退職は早期発見だけでなく、未然に防ぐための組織的な取り組みが欠かせません。従業員が職場に対する信頼や期待を失う前に、環境や制度、コミュニケーションの仕組みを整えることが重要です。企業側が積極的に働きかけ、内面的な孤立や不満が蓄積しにくい土壌をつくることで、静かな退職の発生を抑えることが可能になります。ここでは、具体的かつ実践的な4つの対策を取り上げ、現場での導入に役立つ視点を整理します。
エンゲージメント調査の実施
従業員の本音や満足度を可視化するためには、エンゲージメント調査の活用が有効です。定期的に実施することで、従業員の仕事に対する意欲や組織への信頼度を把握できます。特に、「働きがいが感じられない」「上司に相談しにくい」といった声は、静かな退職の初期兆候と重なることが多く、早期介入の判断材料となります。調査は実施して終わりではなく、結果をもとに対話や施策に反映させることが、対策として最も重要なポイントです。
人事評価制度の見直し
静かな退職は「努力しても報われない」「正当に評価されない」という不満から生まれるケースも少なくありません。そのため、成果だけでなく過程や姿勢も適切に評価される仕組みづくりが不可欠です。また、評価基準が曖昧な場合、従業員は納得感を得られずに関心を失いやすくなります。360度評価や自己評価の導入など、評価の多面化は有効な対策になります。透明性と公正性を兼ね備えた制度は、静かな退職の予防に直結します。
柔軟な働き方を支える制度設計
働き方への価値観が多様化するなかで、柔軟な制度が用意されていない職場では、従業員の不満が蓄積しやすくなります。リモートワーク、フレックス制度、副業の許容など、個人のライフスタイルに合った働き方の選択肢を提供することは、静かな退職の抑制につながります。また、制度があっても活用しにくい雰囲気がある場合は逆効果です。形式ではなく実効性のある制度設計と運用が、継続的な対策として求められます。
360度評価によるフィードバック文化の定着
一方向的な評価ではなく、多面的なフィードバックを取り入れることで、上司・同僚・部下との信頼関係が深まります。360度評価は、本人が気づかない行動傾向を把握できるほか、組織として「声をかけ合う文化」を醸成するきっかけになります。静かな退職は、孤立感や期待の乖離から生まれるため、こうした日常的な対話の仕組みが大きな予防策になります。フィードバックを通じた相互理解が、エンゲージメント向上と離脱防止につながります。
参考記事:360度評価とは?メリット・デメリットと実際の活用方法を紹介
人事部門による静かな退職対策の推進
静かな退職を組織全体で防いでいくためには、人事部門が主導して仕組みや文化を整えることが不可欠です。現場任せでは気づきにくい小さな変化や、制度上のボトルネックを見逃さないためにも、組織横断的な視点と継続的な取り組みが求められます。ここでは、人事部門が果たすべき主な3つの役割について整理し、静かな退職を未然に防ぐための中長期的な視点を持った対策の方向性を考えていきます。
組織横断でのエンゲージメント向上の推進
静かな退職の背景には、職場や業務に対する心理的な関与の希薄化があります。人事部門は、部門ごとに偏りがちな対話の質や評価制度の運用を見直し、全社的にエンゲージメント向上を促す取り組みを主導すべきです。たとえば、全社共通の1on1文化の定着やピア・フィードバックの導入などが有効です。現場に任せきりにせず、人事が旗振り役となって継続的に支援することが、静かな退職の根本的な予防策になります。
人事制度と評価プロセスの整備
人事制度や評価プロセスに不透明さがあると、従業員は自分の仕事が正しく見られていないと感じ、静かな退職に至る可能性が高まります。人事部門は、目標設定と評価の連動性や、フィードバックの質と頻度を点検し、公正かつ納得感のある制度運用を実現する必要があります。また、上司任せではなく、制度全体のガイドラインやトレーニングも提供し、評価者側のスキルも底上げすることが、制度と実態の乖離を防ぐ重要な対策です。
データ活用による早期アラート体制の構築
静かな退職の兆候は主観的な判断だけでは捉えきれないため、サーベイや勤怠、業務実績などのデータを組み合わせた可視化が有効です。人事部門は、定点観測と異常検知の仕組みを整備し、エンゲージメントの低下や業務態度の変化を定量的に把握する仕組みを構築すべきです。さらに、収集したデータを放置せず、現場と連携して打ち手につなげる運用体制を整えることで、静かな退職を早期に防ぐ実効性の高いアプローチが可能になります。
まとめ
静かな退職は、個人の内面的な変化にとどまらず、組織全体の生産性や文化、将来の人材力にまで影響を及ぼす深刻な課題です。従業員の価値観や働き方が多様化する今、画一的な制度やマネジメントではもはや対応しきれません。人事部門は、エンゲージメントを軸にした環境整備と、データに基づく早期察知体制を整えることで、静かな退職を未然に防ぐ役割が求められます。自社にとっての“静かな退職の兆候”に目を向け、今できる対策を一つずつ進めていきましょう。
「CBASE 360°」は、株式会社シーベースが提供するHRクラウドシステムです。経営を導く戦略人事を目指す人事向けのお役立ち情報をコラムでご紹介します。