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360度評価でパワハラは防げる?財務省に学ぶハラスメント防止と組織改革

公開日:2024.11.19 更新日:2025.12.17 ハラスメント対策

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パワハラ防止は、多くの企業にとって避けて通れない人事課題です。
その中で近年注目されているのが、上司だけでなく同僚や部下の視点も取り入れる360度評価(多面評価)です。
では、360度評価は本当にパワハラ防止に有効なのでしょうか。

本記事では、財務省での取り組みや近年の人事制度改革の流れを踏まえながら、360度評価がハラスメント対策や組織風土改革にどのように活用されているのかを整理します。
人事担当者が制度導入・運用を検討する際に押さえておきたいポイントもあわせて解説します。

財務省における360度評価導入の背景──ハラスメント問題と組織風土改革

財務省が360度評価の取り組みを進めてきた背景には、個別のハラスメント事案への対応にとどまらず、管理職のマネジメントや評価のあり方が組織風土に与える影響を見直す必要性がありました。
人事制度を通じて、日常行動や指導のあり方を振り返り、組織全体の課題として改善につなげていく視点が求められていたのです。

財務省で問題視された組織風土(「パワハラ番付」に象徴されるハラスメント文化)

財務省では、かつて「パワハラ番付」(通称「恐竜番付」)と呼ばれる文書の存在が報じられました。
そこでは、威圧的な言動を取る幹部職員が名指しされるなど、強い上下関係や軍隊的な組織文化が問題視されていました。

こうした指摘は、

  • 厳しい上下関係が常態化していたこと
  • 威圧的な指導が黙認されやすい環境だったこと
  • 声を上げにくい職場風土があったこと

といった構造的な課題を浮き彫りにするものでした。
一連の不祥事(2018年の文書改ざん問題やセクハラ問題等)を受けて、財務省内では「個人の問題として片付けるのではなく、組織風土として反省すべきだ」という認識が強まり、「財務省再生プロジェクト」の一環として人事施策の見直しが検討されました。
参照:財務省「財務省再生プロジェクトの推進について(報告)」(2018年10月19日)[PDF]
https://www.mof.go.jp/about_mof/introduction/saisei/20181019_houkoku.pdf

2019年に開始された管理職向け360度評価の取り組み

こうした反省を踏まえ、財務省では2019年頃から、課長級以上の管理職を対象に、上司以外の視点も取り入れた360度評価の試行的な取り組みが行われてきました。
これは、上司による査定だけでなく、同僚や部下といった複数の立場から観察結果をフィードバックすることで、管理職が自身のマネジメントスタイルを客観的に捉えることを狙いとしています。

この取り組みは、単なる評価手法の変更ではなく、

  • 管理職自身の行動変容(気づき)を促すこと
  • ハラスメントにつながりかねない言動に気づく機会をつくること
  • 風通しの良い組織風土へ改革すること

を目的としたものでした。
成果や数値だけでは見えにくい「人への関わり方」に光を当てる点が、大きな特徴といえます。

2024年〜2025年の国家公務員人事制度改革の方向性

こうした財務省の動きは、近年の国家公務員人事制度改革の流れとも一致しています。

「人事院の『人事行政諮問会議 中間報告』(2024年)においては、組織パフォーマンス向上のために『管理職のマネジメント能力の向上』が重要課題として強調されています。

これを受け、現場レベルでは上司・部下間の対話促進や、客観的な視点を取り入れるための360度評価の重要性が改めて認識されています。

参考:人事院「人事行政諮問会議 中間報告」(2024年5月)
https://www.jinji.go.jp/content/000003712.pdf

特に注目されているのが、

  • 管理職の行動や組織への影響を適切に把握すること
  • 評価の透明性・客観性を高めること
  • 人材育成や組織改善につなげること

といった観点です。
財務省の事例は、こうした「組織マネジメント改革」を現場レベルで具体化する先駆的な取り組みの一つと位置づけることができます。

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360度評価とは──行動変容を促す多面的フィードバック

360度評価とは、上司だけの視点に頼らず、同僚や部下など複数の立場から評価を行うことで、管理職や社員の日常行動を立体的に捉える評価制度です。近年では単なる人事評価にとどまらず、行動改善やマネジメント力向上、ハラスメント防止といった目的で導入する企業・官公庁が増えています。このセクションでは、360度評価の仕組みと効果、そして最新の導入動向を整理します。

上司・同僚・部下が評価する仕組みと特徴

360度評価の最大の特徴は、評価者が上司一人に限定されない点にあります。
上司・同僚・部下・関係部署など、立場や関係性の異なる複数の評価者が関与することで、対象者の行動を多面的に捉えることができます。

これにより、以下のような特徴が生まれます。

  • 特定の上司の主観に評価が偏りにくい
  • 日常の言動やコミュニケーションの癖が見えやすい
  • マネジメント行動を具体的に振り返る材料になる

特に管理職層では、「成果」だけでなく部下への関わり方や指導スタイルが評価対象になる点が重要です。これは、従来の目標管理制度(MBO)や評価面談だけでは把握しきれなかった領域といえます。

認識ギャップの可視化による行動改善の効果

360度評価が行動改善につながりやすい理由は、本人の自己認識と他者評価のギャップを可視化できる点にあります。
自分では「適切な指導をしている」と思っていても、部下からは「威圧的」「相談しづらい」と受け取られているケースは少なくありません。

こうしたギャップが明確になることで、

  • 改善すべき行動が具体的に分かる
  • 抽象的な指摘ではなく、日常行動レベルで振り返られる
  • 感情論ではなく、事実ベースで対話しやすくなる

といった効果が期待できます。
特に近年は、ハラスメントにつながる可能性のある行動指標(威圧的な言動、配慮不足な指導、コミュニケーションの偏りなど)を評価項目に含める設計も増えており、事案化する前の「兆候把握」に役立てる動きが広がっています。

企業・官公庁で導入が進む最新トレンド

近年、360度評価は民間企業だけでなく、官公庁でも本格的に活用され始めています。
内閣人事局の方針のもと、財務省をはじめとする中央省庁では、管理職のマネジメント能力や組織風土改善を目的に、多面的評価の導入・拡充が進められています。

最新のトレンドとしては、次のような傾向が見られます。

  • 昇進・配置判断の参考情報として活用(適材適所の人事配置に活かす)
  • ハラスメント防止・心理的安全性向上との連動
  • 結果を処遇ではなく育成・フィードバック重視で使う設計
  • 定量評価と定性コメントを組み合わせた運用

つまり360度評価は、単なる評価制度ではなく、マネジメント力を高め、組織課題を可視化するための育成ツールとして位置づけられつつあります。

360度評価の仕組みやメリット・デメリットについては、以下の記事で詳しく解説しています。
360度評価とは?メリットやデメリット、評価項目やポイントについて解説

財務省の360度評価導入がめざす組織改革

財務省が導入した360度評価は、単なる人事評価制度の見直しではなく、ハラスメントを生みやすい組織風土そのものを変えるための改革施策として位置づけられています。問題が表面化してから対処するのではなく、日常行動の段階で兆候を捉え、組織として改善につなげる点に大きな特徴があります。

ハラスメントの兆候を可視化し、未然に防止する仕組み

財務省の360度評価は、「ハラスメント行為の有無」を直接裁定するための制度ではありません。
あくまで、日常の言動やマネジメント行動を可視化することで、パワハラにつながる兆候を早期に把握することを目的としています。

従来の上司評価だけでは見えにくかった、以下のような行動が評価を通じて浮き彫りになります。

  • 威圧的な言動や感情的な指導が常態化していないか
  • 部下とのコミュニケーションに偏りがないか
  • 意見を聞く姿勢や配慮ある関わりができているか

こうした行動データを定性的に蓄積・比較することで、問題が深刻化する前の段階で気づきを促す仕組みが構築されます。
これは、事後対応型になりがちだったハラスメント対策を、「未然防止型」へ転換する試みといえます。

風通しの改善と心理的安全性の向上への期待

360度評価のもう一つの重要な狙いが、組織の風通しを改善し、心理的安全性を高めることです。
部下や同僚の声が評価という形で制度に組み込まれることで、「意見を言ってもよい」「声が届く」という感覚が生まれやすくなります。

特に期待されている効果として、以下が挙げられます。

  • 管理職と部下の双方向コミュニケーションの活性化
  • 上司のマネジメント行動を振り返る機会の増加
  • 組織内の閉鎖的・硬直的な関係性の緩和

中央省庁では近年、「心理的安全性の向上」が重要な人事課題として位置づけられており、360度評価はその中核的な施策の一つとされています。
管理職のマネジメント行動を多面的に捉え、組織風土の改善につなげる役割が期待されています。

評価結果は、育成や行動改善を主目的としながらも、管理職としての適性を見極めるための配置や登用判断の参考情報として活用されるケースが増えています。
このように360度評価は、心理的安全性の確保とマネジメント力向上を両立する人事施策として位置づけられています。

中央省庁で拡大する360度評価

こうした動きは財務省に限ったものではありません。
経済産業省をはじめとする他の中央省庁でも、管理職のマネジメント力を多面的に測る360度評価の導入・検討が進んでいます。

背景には、以下のような共通課題があります。

  • 成果偏重の評価では組織風土が改善しにくい
  • 管理職の行動が組織全体に与える影響が大きい
  • ハラスメント防止と人材育成を両立する必要性

そのため、360度評価は、組織改革を進めるためのマネジメント基盤として活用され始めています。
この流れは今後、民間企業にも広がっていくと考えられ、財務省の取り組みはその先行事例として参考になるでしょう。

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360度評価をパワハラ防止に活かすための注意点

360度評価は、パワハラ防止や組織風土改革に有効な手法である一方、設計や運用を誤ると逆効果になるリスクもあります。
特にハラスメント対策と結びつける場合は、「評価の目的」「評価結果の扱い方」「評価者の理解度」を丁寧に設計することが不可欠です。ここでは、人事担当者が押さえておくべき注意点を整理します。

告発の場にしないための設計上のポイント

360度評価をパワハラ防止に活かすうえで、最も注意すべき点が、不満のはけ口や告発の場になってしまうことです。
このリスクを避けるためには、制度設計だけでなく、実施前の丁寧な説明が欠かせません。

そのため、以下の点を明確にする必要があります。

  • 360度評価の目的は処罰ではなく行動改善・育成であること
  • ハラスメントの相談や申告は、別の窓口で行うこと
  • 設問は感情ではなく行動事実を問う設計にすること

360度評価はあくまで「日常行動の傾向」を捉える仕組みであり、ハラスメント認定の場ではない、という位置づけを明確にすることが重要です。

匿名性・公平性を担保する運用フロー

360度評価では、評価者が安心して意見を伝えられる環境を整えることが不可欠です。
そのためには、匿名性や公平性を「仕組み」だけで担保するのではなく、事前の説明や認識合わせを通じて、制度への理解と納得感を高めておくことが重要になります。

具体的には、実施前の説明の中で、評価の目的や結果の扱い方、フィードバックの位置づけを明確に共有し、「どのような目的で実施され、どのように活用されるのか」を関係者全員が理解しておく必要があります。
これにより、評価者は過度に身構えることなく、被評価者も結果を前向きに受け止めやすくなります。

評価の透明性と納得感を高める運用フローを設計することが、360度評価を信頼できる制度として定着させるポイントです。

評価者教育の重要性

360度評価の質は、評価者の理解度に大きく左右されます
どれだけ制度設計が優れていても、評価者が適切に回答できなければ、意味のあるフィードバックは得られません。

そのため、多くの組織では以下のようなレビュワートレーニングを実施しています。

  • 主観や感情ではなく、行動事実に基づいて評価する
  • 個人的な好き嫌いを評価に持ち込まない
  • 改善につながるコメントの書き方を学ぶ

特にパワハラ防止を目的とする場合、「指摘」ではなく「気づきを促す評価」ができるかどうかが重要です。
評価者教育をセットで行うことで、360度評価は初めて組織改善のツールとして機能します。

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360度評価はハラスメント防止と組織改革を両立するための手法

財務省の事例から分かるように、360度評価はパワハラを直接取り締まるための制度ではなく、管理職の日常行動やマネジメントのあり方を可視化し、組織風土そのものを改善するための仕組みです。
政府全体でも多面的評価の重要性が高まる中、360度評価はハラスメントの兆候を早期に捉え、未然防止につなげる手法として位置づけられています。

一方で、効果を発揮させるためには、事前説明や評価設計、フィードバックの位置づけを丁寧に行い、評価を「告発の場」にしない運用が不可欠です。
制度そのものではなく、運用と理解の積み重ねが、心理的安全性の向上や管理職の行動改善につながります。
360度評価は、ハラスメント対策と人材育成を同時に進めるための、有効な人事施策の一つといえるでしょう。

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FAQ(よくある質問)

Q1. 360度評価だけでパワハラは防止できますか?
360度評価だけでパワハラを完全に防止できるわけではありません。 ただし、管理職の日常行動やマネジメントのあり方を多面的に可視化することで、 パワハラにつながりかねない兆候に早く気づくきっかけをつくることは可能です。 相談窓口や研修、1on1などの施策と組み合わせて活用することで、未然防止の効果が高まります。
Q2. 360度評価はパワハラの告発や処分に使われるものですか?
一般的に、360度評価はパワハラの有無を判定したり、処分の根拠としたりするための制度ではありません。 主な目的は、日常行動を振り返り、行動改善やマネジメント力向上につなげることです。 ハラスメントの申告や事実確認については、評価制度とは別の仕組みで対応することが重要とされています。
Q3. パワハラ防止の観点で360度評価を導入する際の注意点は何ですか?
注意すべき点は、評価の目的や位置づけを事前に丁寧に共有することです。 評価が不満のはけ口や告発の場にならないよう、育成や行動改善を目的とした制度であることを明確にします。 あわせて、評価結果の扱い方やフィードバックの考え方についても認識をそろえることで、 360度評価を信頼できる仕組みとして定着させやすくなります。


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HRコラム編集部

「CBASE 360°」は、株式会社シーベースが提供するHRクラウドシステムです。経営を導く戦略人事を目指す人事向けのお役立ち情報をコラムでご紹介します。

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