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プロスペクト理論とは|身近な例でわかる損失回避バイアスと人材育成への活用

2024.10.24 人材育成

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プロスペクト理論とは、人が合理的に判断しているつもりでも、実際には「損失を大きく感じる」という心理が働き、意思決定がゆがむメカニズムを説明する行動経済学の理論です。宝くじ・投資・買い物など、身近な場面でも強く影響し、ビジネスや人材育成にも応用できます。本記事では、損失回避バイアスの特徴、日常の分かりやすい例、人事評価や目標設定での活用方法まで、現場ですぐに使える形で解説します。

プロスペクト理論とは

プロスペクト理論とは、理論で行動経済学の理論の一つで、「人の判断は、不確実性がある判断のとき、条件や状況によって、合理的な価値判断ができない場合がある」という理論です。ダニエル・カーネマンによって1979年に提唱されました。
ギャンブルや宝くじだけではなく、マーケティングや広告でも活用されている理論です。

フレーミング効果との違い

プロスペクト理論とよく混同される概念に「フレーミング効果」があります。これは、同じ情報でも“表現の仕方(フレーム)”によって印象や判断が変わる現象を指し、損失回避の心理を説明するプロスペクト理論とも関連しますが、焦点は 「情報の提示方法」 にあります。

たとえば「成功率98%」と「失敗率2%」は意味が同じでも、前者のほうがポジティブに感じられます。このような言い換えによる印象の変化は、広告・マーケティングだけでなく、組織内のコミュニケーションでも活用されています。

人材育成やフィードバックでは、相手が前向きに受け取りやすい表現を選ぶことが重要です。
参考:リフレーミングとは|人材育成に役立つポジティブな言い換えとフィードバック技術

プロスペクト理論における意思決定バイアスの3要素

プロスペクト理論では、人が合理的に判断しているようで実際には“価値の感じ方”や“確率の捉え方”を歪めて解釈してしまうとされています。意思決定に影響する要素は主に次の3つです。

  1. 価値関数(価値の感じ方のズレ)
    同じ金額でも「得をする嬉しさ」より「損をする痛み」のほうが大きく感じられるように、人が主観的に感じる価値は客観的な価値とは一致しません。
  2. 確率荷重関数(確率の認識の歪み)
    本来の確率より、低い確率を過大評価したり、高い確率を過小評価する傾向があります。たとえば「当たる可能性が低い宝くじ」に期待しすぎたり、「成功率が高いのに不安で挑戦を避ける」といった行動がこれにあたります。
  3. 参照点(基準)の影響
    人は“現在の状態”を起点に判断し、そこからのプラス・マイナスで感じ方が変わります。昇給額が同じでも「期待より少ない」と不満を感じるケースが典型例です。

    これら3つの要素が組み合わさることで、人の意思決定は一見不合理なものになると説明されています。
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プロスペクト理論の事例

プロスペクト理論は、私たちの日常の判断や投資行動、さらにはビジネスの購買行動にも強く影響しています。ここでは、特に理解しやすい3つの事例を取り上げ、どのように損失回避バイアスや確率の歪みが作用しているのかを解説します。

日常に見られるプロスペクト理論の例(宝くじ・ギャンブル)

宝くじは、当選確率が極めて低いにもかかわらず、多くの人が購入する典型的な事例です。実際には「ほぼ損をする」商品ですが、1億円といった大きな利益のイメージが強く残るため、成功確率を実際より高く感じてしまいます。これは、低確率の利益を過大評価してしまう「確率の歪み」が働いているためです。

また、ギャンブルでも似た傾向が見られます。わずかな成功体験の印象が強く残ることで、「次こそ勝てる」という期待が膨らみ、実際よりも成功確率を過大に見積もる心理が働きます。

投資における損失回避の典型例

投資の世界では、プロスペクト理論が特に顕著に表れます。

利益が出ているときは「もっと利益を得たい」よりも「利益を失いたくない」という気持ちが強く働くため、早めに利確してしまう傾向があります。一方で、損失が出ているときは「損を確定したくない」という心理が働き、成功確率を実際以上に高く見積もってしまい、損切りが遅れる行動につながります。

このように、人は損失を過大視し、利益を過小評価するため、合理的な判断ができなくなるケースが多く見られます。

ビジネスで活用されるプロスペクト理論(価格設定・マーケティング)

ビジネス領域でも、プロスペクト理論は価格設定・マーケティング・商品設計に幅広く利用されています。

  • 「通常価格からの値引き」を強調する
  • 「今買わないと損をする」といった訴求を使う
  • 成果報酬型プランで“損失リスクなし”を提示する

これらはすべて、「損失を避けたい」という心理に働きかけ、行動を促す仕組みです。

また、組織内のコミュニケーションや制度設計でも活用できます。昇給や評価制度では、人が“期待値(参照点)”を基準に満足度を判断するため、提示の仕方によって受け取り方が大きく変わります。
参考:【例文つき】フィードバックの伝え方|シーン別にポジティブ&ネガティブな表現をご紹介

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プロスペクト理論が人に与える影響

プロスペクト理論によると、人は確率通りに行動せず、状況や条件によって確率を歪めて解釈します。大まかに以下のような傾向があるといわれています。
・人は損失を回避する傾向がある
・それまでの状況によって、判断が変わる
・扱う金額で損得の考え方が変わる

次で詳しく解説します。

人は損失を回避する傾向がある

人は確率による期待値以上に、損失を回避しようとする傾向にあるという、損失回避の傾向があります。
たとえば、「①:コインを投げて表が出れば10,000円損をするが、裏が出たら損をしない」、「②:無条件で4,000円失う」という2種類の選択肢があった場合を考えてみましょう。
期待値で見れば②を選ぶ方が確率として損をする可能性が低いのですが、実際には①を選ぶ人が多いといわれています。これは、人が損失が出るのを嫌い、損をしない可能性がある方を重視する傾向があるためです。
また、借金がある場合、確率が低くてもギャンブルや投資に手を出してしまうことも、損失回避性が関わっています。

それまでの状況によって、判断が変わる

それまでの状況によって、判断が変わる参照点依存性という性質があります。ギャンブルで、「途中まで50,000円勝っていたが最終的に10,000円の勝ちになった」「途中まで50,000円負けていたが最終的に10,000円勝った」という場合、最終的な結果は同じですが、後者の方がよい結果だったという印象を与えます。

このように物事の損失の判断はその時点の状況によって捉え方が変わります。

扱う金額の大きさで損得の考え方が変わる

扱う金額が大きくなると、損得の感じ方が変わる現象があります。これが感応度逓減性という性質です。安い買い物の場合、数10円の違いでも、気になる傾向にあります。マイホームなどのような何千万もする買い物の場合、数10万円のオプションが些細な違いに感じる傾向にあります。

プロスペクト理論の活用方法

プロスペクト理論は、損失回避バイアスや確率の歪みを前提にした「人がどのように意思決定するか」を理解できるため、人材育成、評価制度、組織マネジメントなどのビジネス領域で幅広く活用できます。以下では、特にHRで使いやすい3つの活用方法を紹介します。

損失回避を利用して行動を促す(例:目標設定・評価面談)

人は「得すること」より「損したくない」という感情のほうが動機づけになりやすい傾向があります。
そのため、目標設定や評価面談では、メリットだけでなく「この行動を取らない場合にどんな機会を失うか」を明確に示すと、行動変容につながりやすくなります。

  • 例:「改善をすると成果が伸びる」ではなく「改善をしないと、成果の最大化チャンスを逃す可能性がある」
  • 例:期限遵守の習慣化を促す際、「信頼を積み上げる」だけでなく「遅延で信用を損なうリスク」に触れる

リスクを取り除き、挑戦を後押しする(例:人材育成・OJT)

人はリスクがあると判断すると、確率以上に「失敗の痛み」を重く見積もるため挑戦を避けがちです。
そこで、育成の場では以下のように「リスクの遮断」や「安全な枠組み」を示すことでチャレンジしやすい状態を作れます。

  • 明確なサポート体制の提示
  • 小さな成功体験を積み重ねる仕組み
  • 失敗が即マイナス評価にならない文化づくり

これは、社員が新しい業務や改善提案に取り組みやすくなる効果があります。

給与・評価制度に応用する(例:インセンティブ設計)

プロスペクト理論は、評価制度にも応用できます。人は「現状」を基準(参照点)として判断するため、同じ報酬でも提示方法が異なると受け止め方が変わります。

  • 「成果に応じて追加報酬が得られる」
    → 利得を強調
  • 「基準を満たさないと報酬が下がる可能性がある」
    → 損失回避を活用して行動を促進

このように、制度づくりでは合理性だけでなく「従業員がどこに損失を感じるか」という心理面の理解が欠かせません。また、評価制度には無意識の認知バイアスが影響することも多く、制度の公平性を損なう原因になります。
公正な評価のためには、バイアスへの理解と対策も重要です。
参考:人事評価に潜む確証バイアスとは?公平性をゆがめる心理の仕組みと防止策
プロスペクト理論の視点を取り入れることで、従業員がチャレンジしやすく、納得感の高い制度設計に近づけることができます。

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プロスペクト理論を人材育成に取り入れる

プロスペクト理論は、人が「損失を大きく感じる」心理を説明する理論ですが、この理解は人材育成の設計にも非常に役立ちます。従業員がどのような場面で不安やリスクを感じ、どのように行動しやすくなるかを読み解くことで、育成施策の質を高めることができます。ここでは、特に活用しやすい2つの観点を紹介します。

チャレンジを容認できる環境作り

従業員が「失敗したら損をする」と感じると、実際のリスク以上に恐怖が大きくなり、新しいチャレンジを避けてしまう傾向があります。これは損失回避バイアスによる典型的な行動です。

そのため、以下のような「リスクを最小化し、安全に挑戦できる枠組み」を提示することが重要です。

  • 必要なステップを一緒に整理する
  • サポート体制やフォローの範囲を明確にする
  • 小さな成功体験が積み重なる仕組みを用意する

これにより、従業員は「失敗の痛み」よりも「挑戦する価値」に目を向けやすくなり、行動につながりやすくなります。

給与・人事制度に応用する(インセンティブ設計)

給与体系や評価制度は、プロスペクト理論との相性が非常に強い領域です。人は“現在の状態(参照点)”からのプラス・マイナスで満足度を判断するため、制度の設計・伝え方次第で受け取り方が大きく変わります。

たとえば:

  • チャレンジの失敗が昇給・昇格に不利になる制度
    → 「損失を避けたい」心理が働き、挑戦が減る
  • 成果に応じて追加報酬が得られる仕組み
    → 利得を感じやすく、行動に前向きになりやすい

制度づくりでは、合理性だけでなく「従業員がどこに損失を感じるのか」という心理面の設計が重要です。プロスペクト理論の視点を取り入れることで、従業員がチャレンジしやすく、納得感の高い制度に近づけることができます。

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まとめ

プロスペクト理論は、人が損失を大きく感じ、確率や価値を歪めて判断してしまう心理を説明する理論です。宝くじや投資などの日常行動に加え、ビジネスの購買行動や仕事上の意思決定にも大きく影響します。人材育成の場面では、従業員が感じる「失敗の痛み」や「期待値(参照点)」を理解することで、挑戦を後押しし、評価制度の納得感を高める施策につなげられます。損失回避バイアスや参照点を踏まえてフィードバックや制度設計を行うことで、より行動を促しやすい環境を作ることができます。

FAQ(よくある質問)

Q1. プロスペクト理論とフレーミング効果の違いは何ですか?
プロスペクト理論は、人が損失を過大評価しやすいことや価値・確率の歪みに基づく意思決定の特徴を説明する理論です。 一方、フレーミング効果は「同じ情報でも表現の仕方によって判断が変わる」現象を指します。 フレーミング効果はプロスペクト理論と関連しますが、主に“情報提示の仕方”に焦点がある点が違いです。
Q2. プロスペクト理論は日常生活のどんな場面で使われていますか?
セール品に惹かれて必要以上に買ってしまう、宝くじの当選確率を過大評価する、 投資で損切りできずに持ち続けてしまう——これらはすべてプロスペクト理論が示す“損失回避バイアス”の影響です。 日常の買い物、金融行動、仕事の判断など、あらゆる場面で見られます。
Q3. 人材育成や評価制度にプロスペクト理論は活用できますか?
活用できます。人は「得より損のほうを強く感じる」ため、評価フィードバックや目標設定では 損失回避の心理を意識することで行動変容につながりやすくなります。 また、給与改定や制度設計では“参照点(期待値)”の調整が満足度に大きく影響します。


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HRコラム編集部

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