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人事評価におけるピグマリオン効果とは?期待が行動を変える仕組みと活かし方

2025.11.14 その他

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人事評価では、上司がどのような“期待”を伝えるかによって、部下の行動や成長が大きく変わります。これは「ピグマリオン効果」と呼ばれる心理的メカニズムで、適切に活用すれば主体性・パフォーマンス・エンゲージメントの向上につながります。本記事では、ピグマリオン効果の仕組みから、関連するバイアス、人事評価での実践方法、さらに評価コメントへの落とし込み方までを体系的に解説します。部下の力を引き出す評価を実践したい人事・マネージャーの方はぜひ参考にしてください。

目次

ピグマリオン効果とは

ピグマリオン効果とは、他者から期待により、学習や作業の効果が高まる心理効果です。アメリカの心理学者ローゼンタールが発見した効果で、「ローゼンタール効果」や「教師期待効果」とも呼ばれています。
ピグマリオンとは、ギリシャ神話に出てくる王の名前です。ある女性像に恋焦がれた結果、女神が人間にしたという話が元になっています。

ピグマリオン効果の実験

ピグマリオン効果についての実験としては、1963年にローゼンタールとフォードが行ったものがあります。
ネズミを使った迷路実験を行う際、学生に「よく訓練された賢いネズミ」と「訓練していないノロマなネズミ」に分けてネズミを渡しました。その結果、学生は賢いネズミは丁寧に扱いますが、ノロマなネズミはぞんざいに扱う傾向があることがわかりました。

教育現場でも1964年に学生に対して、実験を行っています。ある知能テストを学生に対して行い、結果に関係なく、無作為に抽出した生徒を「これらの生徒は成績が向上する生徒」として、先生に説明しました。
その結果、期待をかけられた生徒は、他の生徒と比較して、成績がより向上したいう結果が得られました。先生はこれらの生徒を期待を込めてみるようになる、生徒は期待を込められていることを意識するということが要因だと考えられています。

人材育成におけるピグマリオン効果の具体例

職場でも同じ現象が起きます。たとえば上司が部下に対して、「あなたならきっとこのプロジェクトを成功させられる」と期待を伝えると、部下はその信頼に応えようと努力します。

逆に、「どうせ無理だろう」という態度が伝わると、パフォーマンスが下がるケースも多いでしょう。
このように、評価者やリーダーの“期待”は、単なる感情ではなく行動を変えるトリガー
となります。
特に人事評価では、「信頼を前提とした期待」が部下の主体性を高め、組織全体のエンゲージメントを向上させます。

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ピグマリオン効果が人事評価に影響を与える理由

人事評価の場面では、「上司の期待」が部下の行動を変える強い心理的作用を持ちます。
単なる理論ではなく、評価者の言葉や態度が日々の行動・成果に直結する点で、ピグマリオン効果は人材マネジメントにおける重要テーマです。ここでは、そのメカニズムと科学的根拠を整理します。

期待が行動変容を引き起こす心理的メカニズム

人は他者から「期待されている」と感じると、その期待に応えようとする自己充足的な行動をとる傾向があります。
心理学的には「自己成就予言」と呼ばれ、上司の期待が部下の自己評価を変化させることで、実際のパフォーマンスが向上します。
特に人事評価の場面では、「あなたに任せたい」「次はリーダーを目指してみよう」といった前向きなメッセージが、主体性や達成意欲を高める“行動トリガー”になります。

評価者の言葉や態度が部下の成果を左右する構造

ピグマリオン効果は、上司が意識せずに発する言葉や態度にも反映されます。
例えば、同じ指示でも「頼んだよ」という一言を添えるだけで、部下の心理的なモチベーションが変わります。
また、期待されている社員ほど上司の注目・フィードバックの頻度が高くなるため、行動改善の機会も増える=成果につながるという構造が生まれます。

この関係を整理すると以下のようになります。

評価者の行動 部下の心理反応 結果
信頼をもって任せる 自己効力感が高まる 成果・挑戦意欲の向上
否定的・無関心な態度 自信喪失・萎縮 成果の低下・受動化

評価者の“無意識なサイン”も部下のパフォーマンスに影響するため、言葉と態度の一貫性が不可欠です。

「見られている」ことがパフォーマンスを変える科学的根拠

心理学では「ホーソン効果」と呼ばれる現象があります。
これは、人は注目されていると感じるだけで、行動や成果が向上するという実験結果に基づくものです。
人事評価の場面では、評価面談や1on1など、上司の関心が可視化される場面が多く存在します。
つまり、「見てもらえている」「信頼されている」という認知が、自然と自己成長の動機につながるのです。

関連リンク:上司と部下の対話で“期待”を伝える実践法はこちら
👉 1on1で伝えるフィードバックの基本と実践ポイント

ピグマリオン効果と関連する心理効果の違い

ピグマリオン効果を正しく活用するには、似ているようで実は異なる心理効果との違いを知ることが欠かせません。特に人事評価では、期待のかけ方ひとつで成果が上がることもあれば、逆に評価の歪みを生むこともあります。ここでは代表的な関連心理効果を整理し、人事担当者が押さえるべき注意点をまとめます。

ゴーレム効果との違い

ゴーレム効果は、ピグマリオン効果の“負の反対側”に位置付けられる心理現象です。
ピグマリオン効果が 「高い期待 → 行動促進 → 成果向上」 の連鎖を生む一方、ゴーレム効果はその逆で、「低い期待 → 自己効力感の低下 → 成果悪化」 という悪循環を引き起こします。

たとえば、上司が無意識に「この人には難しいだろう」と考えると、

  • 声をかける頻度が減る

  • 任せるタスクの幅が狭くなる

  • 成長の機会が与えられない

といった行動につながり、部下本人も「期待されていない」と感じてパフォーマンスを落としやすくなります。

人事評価では、こうした無意識の“低い期待”が評価コメントにも影響しやすく、評価の歪みを生む代表的な要因となるため注意が必要です。

ハロー効果との違い

ハロー効果とは、ある一部の印象がその人の総合評価に影響してしまう心理バイアスです。
ピグマリオン効果との大きな違いは次の通りです。

効果名 原因 評価への影響
ピグマリオン効果 他者からの期待 行動・成果が変わる
ハロー効果 印象の偏り 評価が歪む

 

具体的には、下記のような誤認が生まれやすい特徴です。

  • 「明るい性格 → 仕事ができる」と過大評価する
  • 「ミスが多い → 他の業務も不安」と過小評価する

関連記事:ハロー効果の仕組みと対策はこちら
👉 ハロー効果とは?人事評価に起こる偏りと5つの対策をわかりやすく解説

ホーソン効果との関係性

ホーソン効果は、「人は注目されていると成果が向上する」という、観察されている状況が影響する心理現象です。
ピグマリオン効果と似ていますが、明確な違いがあります。

  • ピグマリオン効果:“期待”が成果を変える
  • ホーソン効果:“注目”が成果を変える

つまり、上司の期待が行動を変えるのがピグマリオン効果であり、
「見られている」「関心を持たれている」と感じることで行動が改善されるのがホーソン効果です。

評価面談や1on1が効果的な理由の一つが、まさにこのホーソン効果によるものです。
部下は注目されることで成長意欲が高まり、結果として行動改善につながりやすくなります。

評価者が陥りやすい心理的バイアスとその防止策

人事評価に関わる心理的バイアスは、ピグマリオン効果・ハロー効果だけではありません。評価者が無意識に陥りやすい代表的なバイアスには次があります。

  • 近接誤差(最近の出来事だけに引っ張られる)
  • 寛大化傾向/厳格化傾向(甘く/厳しくつけがち)
  • 対比誤差(他の部下との比較で評価が変動)

これらを防ぐためには、下記のような運用が有効です。

  • 評価基準を明文化し、行動ベースで判断する
  • 1on1や記録を活用して“事実ベース”の材料を増やす
  • 複数の視点(同僚・ログ・成果データ)を組み合わせる

関連リンク:評価バイアスの全体像を知りたい方はこちら
人事評価のエラー・バイアス10選|不公平を防ぐ仕組みと改善策を解説

人事評価でピグマリオン効果を活かす実践ポイント

ピグマリオン効果を人事評価で活かすためには、「期待の伝え方」「目標の与え方」「コメントの書き方」の3つが実務上の鍵となります。評価者の言葉や態度は、部下の行動・成長スピードに直接影響するため、再現性のある形で運用に落とし込むことが重要です。ここでは、人事担当者がすぐに使える実践ポイントを整理します。

期待を“伝わる言葉”で明確にする

ピグマリオン効果を最大限に発揮させるには、「期待を具体的な言葉で伝える」ことが欠かせません。
曖昧な「頑張ってほしい」では行動につながらず、期待が適切に伝わらないためです。
期待を伝える際のポイントは次の3つです。

  • 行動を具体的に示す(例:「次の会議では自分の意見を1つ提案してほしい」)
  • できている部分を明確に伝える(例:「調整力が高いので、役割分担を任せたい」)
  • “あなたならできる”という信頼を言語化する

また、面談や1on1はピグマリオン効果が働きやすい場面です。「見られている」「期待されている」と感じることで、行動が改善されるホーソン効果も同時に作用します。

関連リンク:具体的な伝え方はこちら
1on1で伝えるフィードバックの基本と実践ポイント

裁量と挑戦のバランスを設計する

期待をかけるだけではなく、“挑戦できるが達成可能”な目標を与えることが重要です。
過度な期待はプレッシャーとなり、逆にパフォーマンスを落とす可能性もあります。

適切な目標設定には、次の要素が欠かせません。

  • 部下のレベルに応じた裁量権を付与する
  • 過度ではなく“ストレッチ”した課題を提示する
  • 目標・期待の根拠を言語化し、納得感を与える
  • 進捗を定期的に確認し、必要に応じて調整する

評価者の行動が部下の心理に与える影響は以下のように整理できます。

評価者の行動 部下の心理反応 結果
適切な裁量を与える 自己効力感が高まる 挑戦意欲・成果の向上
過剰な期待や低い期待を与える プレッシャー/萎縮 成果の低下・受動化

成果だけでなく“成長過程”を評価するコメント

ピグマリオン効果を継続的に働かせるためには、成果だけを評価するのではなく、過程への評価が欠かせません。
プロセスを認めることで、部下は「見てもらえている」「期待されている」と感じ、モチベーションが安定しやすくなります。

成長過程を評価するコメントには次の特徴があります。

  • 行動事実に基づいて記述されている
    例:「困難な場面でも粘り強く顧客対応に取り組んでいた」
  • 次の挑戦につながる期待が含まれている
    例:「次は自ら改善提案をリードしてほしい」
  • 成果に至らない“努力”も丁寧に扱う

また、部下の行動データや業務ログをもとに記載すると、内容の精度が上がり、評価の透明性も高まります。

関連リンク:具体的な書き方はこちら
👉 人事評価コメントが書けない原因と書き方のコツ【例文つき】

ピグマリオン効果を活かした人事評価コメント例

人事評価におけるコメントは、単なる「評価の記述」ではなく、部下の成長を促すためのメッセージでもあります。ピグマリオン効果を意識すると、言葉の選び方ひとつで部下の主体性・挑戦意欲を高めることができます。ここでは、前向きな期待の伝え方から、成長を支える表現、プレッシャーを避ける工夫まで、実務で使えるコメント例をまとめます。

前向きな期待を伝えるコメント例

前向きな期待を伝えるコメントは、部下の自己効力感を高め、「信頼されているから応えたい」という心理を引き出します。
重要なのは、抽象的な褒め言葉ではなく、行動を特定して期待を示すことです。

以下は、実務でそのまま使える前向きな期待コメントの例です。

  • 「顧客への丁寧な対応が高く評価されています。次は提案力を活かし、より幅広い案件に挑戦してほしいです。」
  • 「課題に対して主体的に行動できています。今後はメンバーを巻き込みながらプロジェクトを推進していけると期待しています。」
  • 「迅速な判断と報連相の精度が上がってきています。次はより複雑な業務へチャレンジしていきましょう。」

これらは「できている点の明示」→「次への期待」という構造で、ピグマリオン効果が発揮されやすい形式です。

成長への信頼を表す評価コメント例

ピグマリオン効果は「期待」だけでなく、「あなたならできる」と信じる姿勢があるほど強く働きます。
そのため、信頼を感じさせるコメントは、部下の挑戦意欲を高める効果があります。

以下は、成長を後押しする信頼表現の例です。

  • 「困難な状況でも粘り強く取り組む姿勢が魅力です。継続力と誠実さが、次のステップにつながると確信しています。」
  • 「細かな改善を積み重ねられる点に成長の兆しがあります。さらなる役割拡大に向けた準備は整っていると感じます。」
  • 「新しい業務にも積極的に取り組む姿勢はチームに良い影響を与えています。次期リーダーとしての成長を期待しています。」

読んだ瞬間に、「自分は信頼されている」と感じられる表現は、特に評価者面談で強い効果を発揮します。

プレッシャーにならない期待表現の工夫

期待を伝える際、意図せずプレッシャーになってしまうことがあります。
実際、データ分析では「期待の強度が高すぎるコメント」は、部下の成果を下げる傾向(=軽度のゴーレム効果)が見られます。

これを避けるポイントは以下の3つです。

  • 「絶対」「必ず」など過度な断定表現を避ける
  • “結果だけ”を求めず、プロセスも評価する姿勢を示す
  • 伴走する姿勢を言語化する(例:「一緒に取り組んでいきたい」)

プレッシャーの強さを比較すると、以下のように整理できます。

コメントのタイプ 受け取り方 心理的影響
強すぎる期待(断定的表現) 「失敗できない」と感じる 萎縮・ストレス
伴走型の期待(前向き+支援) 「見守られている」と感じる 挑戦意欲の向上

このように、期待の伝え方を少し変えるだけで心理的負荷は大きく変わります。

関連リンク:コメントに迷ったときのガイドはこちら
人事評価コメントが書けない原因と書き方のコツ【例文つき】

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組織でピグマリオン効果を活かす仕組みづくり

ピグマリオン効果は、個々の評価コメントや面談だけでなく、組織全体の仕組みによって“再現性”が高まります。評価者による属人的なマネジメントでは限界があるため、期待が伝わりやすい文化やフィードバック制度を組織として設計することが重要です。ここでは、企業の人事が整備すべき実践的な仕組みづくりのポイントをまとめます。

評価者研修で「期待の伝え方」を体系化する

ピグマリオン効果を組織で活用するには、評価者が共通の認識とスキルを持つことが前提です。
「良い期待の伝え方」「プレッシャーにならない言葉選び」などは、属人的な経験に頼ると評価の質に差が出てしまいます。

研修で扱うべきテーマ例は以下の通りです。

  • 行動ベースで期待を伝える方法
  • バイアスに影響されない評価の進め方
  • フィードバック面談での“伸ばす言葉”と“詰まらせる言葉”
  • プロセス評価と成果評価のバランス設計

とくに、1on1や面談のスキルはピグマリオン効果と相性が良いため、重点的に取り扱う価値があります。

関連リンク:面談スキルを高めたい方はこちら
1on1で伝えるフィードバックの基本と実践ポイント

フィードバック文化を日常的に定着させる

ピグマリオン効果は、“日常的に期待を伝える環境”が整って初めて持続的に機能します。
評価タイミングだけで期待を伝えるのでは不十分で、普段から上司との対話がある企業ほど効果が発揮されやすい傾向があります。

そのためには、以下の仕組みを整えることが推奨されます。

  • 1on1の定期実施(週1/隔週など)
  • プロジェクト単位での小レビューの導入
  • “できたこと日報/週報”で期待の進捗を見える化
  • 挑戦のハードルを下げる“心理的安全性”の醸成

また、フィードバックの質を標準化するために、
「行動→根拠→期待」の3ステップを浸透させると効果が安定します。

組織として“良いフィードバックをすることが当たり前”という文化ができれば、自然とピグマリオン効果が循環し、部下のエンゲージメントも高まります。

多面的な評価制度を取り入れ、期待の偏りを抑える

上司個人の期待に依存しすぎると、ハロー効果や対比誤差など心理的バイアスの影響を受けやすくなります。
これを防ぐ手段として、多面的なフィードバック制度(360度評価など)を導入すると、期待の見える化と評価の妥当性が高まります。

360度評価で得られる効果としては:

  • 本人が気づきにくい強みが周囲から見える
  • 主観的な期待が分散され、公平性が高まる
  • 上司以外から“期待”を受け取ることで成長の動機が増える

これは、ピグマリオン効果による“期待を感じる経験”をチーム全体から得られる点で、効果が持続しやすい仕組みです。

関連リンク:制度設計の参考に
360度評価とは?メリット・デメリットと実際の活用方法を紹介
部下が上司を評価する制度?360度評価の項目・例文のサンプル・テンプレートを紹介

心理的安全性を整え、「期待が伝わる」組織文化をつくる

最後に重要なのは、部下が安心して期待を受け取れる環境を整えることです。
心理的安全性が低い組織では、期待が“プレッシャー”として受け取られやすく、ゴーレム効果が発生するリスクが高まります。

心理的安全性を高める要素としては:

  • 失敗を責めず、学びとして扱う姿勢
  • 意見・提案を歓迎する雰囲気づくり
  • 役職に関係なく相談できる対話構造
  • 成果よりも成長プロセスを評価する文化

評価者が良い言葉を使っても、組織文化が厳しすぎればピグマリオン効果は出ません。
逆に、心理的安全性が高い組織では“期待=応援”として受け取られ、行動変容が自然と起こります。

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ピグマリオン効果の注意点と限界

ピグマリオン効果は、人事評価や育成に大きな影響を与える強力な心理現象ですが、万能ではありません。期待のかけ方を誤ると逆効果になることもあり、評価の公平性や部下の心理状態に細心の注意が必要です。ここでは、人事担当者が押さえておくべき限界とリスク、適切な扱い方を整理します。

過剰な期待が招く“プレッシャー効果”に注意する

ピグマリオン効果は「前向きな期待」によって部下が伸びる一方で、期待の強度が高すぎるとプレッシャーによる萎縮につながります。
特に、責任感の強いタイプや完璧主義の部下ほど影響を受けやすい傾向があります。

過度な期待が生むリスク:

  • 失敗を恐れて挑戦しなくなる(リスク回避行動)
  • “成果を出さねば”というストレスの蓄積
  • 上司への相談が減り、孤立が進む

期待は“押し付けるもの”ではなく、“可能性を引き出すもの”であることを常に意識する必要があります。

期待が特定の社員に偏るとチームの公平性が崩れる

評価者が「期待している社員」と「そうでない社員」を明確に扱い分けてしまうと、チーム全体の公平性や心理的安全性が損なわれる可能性があります。

偏りが生む問題:

  • 一部社員にだけ機会が集中する
  • 期待されない側のモチベーションが低下
  • チームの不満や不公平感が増大する
  • ハロー効果・ゴーレム効果が強まりやすい

ピグマリオン効果は、適切なフィードバック文化と評価基準の透明性が整ってこそ健全に働きます。

関連リンク:評価の不公平を防ぐためには?
👉 人事評価のエラー・バイアス10選|不公平を防ぐ仕組みと改善策を解説

期待は「相手が受け取るかどうか」がすべて

どれほど丁寧に期待を伝えても、部下が“期待”ではなく“圧力”として受け取るケースがあります。
ピグマリオン効果は“相互作用”であり、送り手(上司)と受け手(部下)の認知によって効果が変わります。

受け取りに影響する要素:

  • 上司との信頼関係の深さ
  • これまでの評価経験
  • 部下の性格(慎重/挑戦型など)
  • 組織文化(心理的安全性の有無)

評価者側は「伝わり方」を客観的に確認しながら言葉を選ぶ必要があります。

効果は一時的であり、継続には“フィードバックの習慣”が必要

ピグマリオン効果は、“期待を伝えたその瞬間”に強く働きますが、一度伝えるだけでは長続きしないという限界があります。

継続させるためには:

  • 定期的な1on1で行動を振り返る
  • 期待→行動→結果のサイクルを可視化する
  • 小さな行動変化にもフィードバックする
  • “できたこと”を積み上げて自己効力感を高める

こうした仕組みづくりがないと、ピグマリオン効果は単発で終わってしまい、持続的な成長支援にはつながりません。

「期待=ポジティブな圧力」にならないようにするために

最後に重要なのは、期待を“応援”として伝える姿勢です。
これが欠けると、上司の期待は単なるノルマに変わり、逆に行動意欲を奪います。

言い換えるべきポイントの例:

NG表現 OK表現
「絶対成功させて」 「一緒に成功を目指したい」
「もっと結果を出すべき」 「伸ばせるポイントが見えてきた」
「期待に応えなさい」 「あなたの成長を楽しみにしている」

こうした微調整だけでも受け取り方は大きく変わり、ピグマリオン効果はポジティブに働きます。

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まとめ:評価とは“期待を伝える”信頼のマネジメント

ピグマリオン効果は、単なる心理学の現象ではなく、評価者の言葉や態度が部下の行動を変える“実務的なマネジメント原理”です。評価とは査定ではなく、部下の可能性を信じて伝える行為であり、その姿勢が主体性や挑戦意欲を引き出します。大げさなことをする必要はなく、日々のコミュニケーションに「期待」を一言添えるだけで行動は変わります。たとえば「次も任せたい」「この強みを伸ばしていこう」といった前向きな言葉は、自己効力感を高め、成長につながるきっかけになります。

一方で、期待の押しつけはプレッシャーや萎縮を生むため、支援する姿勢とセットで伝えることが重要です。明日からできる実践として、1on1や日常のやり取りで“できている点+次への期待”を短く伝えてみてください。小さな言葉の積み重ねが、組織の成長をつくります。

FAQ(よくある質問)

Q1. ピグマリオン効果はすべての部下に同じように効果があるのですか?
ピグマリオン効果は多くの場面で有効ですが、すべての部下に同じように作用するわけではありません。 受け取る側の性格や上司との信頼関係、心理的安全性の有無によって効果が変動します。 特に、期待を「応援」として受け取れる環境があるほど効果が出やすく、反対に不安の強い状態ではプレッシャーになり逆効果となるケースもあります。
Q2. 期待をかけすぎると逆に悪影響が出るのはなぜですか?
期待の強度が高くなりすぎると、部下が「失敗できない」と感じて萎縮するためです。 これはピグマリオン効果の裏側にある“プレッシャー効果”で、成果を求めるあまり過度に断定的な表現を使うと起こりやすくなります。 避けるためには、成果だけでなくプロセスを評価する姿勢や「一緒に進めたい」という伴走メッセージが重要です。
Q3. 人事評価コメントにピグマリオン効果を活かすポイントは何ですか?
もっとも重要なのは「できている点の事実」+「次に期待する行動」をセットで伝えることです。 抽象的な称賛ではなく、具体的な行動を根拠に期待を示すと、部下は成長イメージを描きやすくなります。 また、“強制ではなく信頼”のスタンスを保つことが、プレッシャーを生まずに成果につなげるポイントです。


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HRコラム編集部

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