エンゲージメントスコアとは?会社の成長につながる測り方と上げ方を解説
よく耳にする「エンゲージメントスコア」とは一体どういったものなのでしょうか?
このスコアを理解して活用することは、会社の成長にとって大切なことなのです。
エンゲージメントスコアを知っておくと、社員がいきいきと働ける環境づくりに役立ち、結果として会社の業績アップにもつながるかもしれません。
さらに、社員が会社にどれくらい愛着を持っているかが分かれば、早期離職を防ぐポイントも見つかるでしょう。
この記事では、エンゲージメントスコアの基本から、具体的な測り方、そしてどうすればスコアを上げられるのか、分かりやすくお伝えしていきます。
目次
エンゲージメントスコアとは?
エンゲージメントスコアとは、社員のやる気や会社への貢献意欲を「見える化」するものです。
ただ満足しているだけでなく、会社と一緒に成長したい!という気持ちがどれくらいあるかを示しています。
このスコアを理解して活用することが、今の時代の会社経営では欠かせないポイントになっているのです。
仕事への熱意と会社への貢献意欲を数値化した指標
エンゲージメントスコアは社員が自分の仕事や会社に対して、どれだけ「熱い気持ち」や「貢献したい!」という想いを持っているかを数字で表したものです。社員がどれだけ仕事に積極的に関わって、会社と「心のつながり」を感じているか、ということですね。
このスコアは「働きがいがある」というだけでなく、会社の成功を考えて、自分も頑張ろう!という意欲の表れでもあります。
数字にすることで、これまで曖昧だった社員の気持ちを客観的に把握できるようになるでしょう。
従業員満足度は待遇への満足、エンゲージメントは成長への貢献意欲
「エンゲージメント」と「従業員満足度」は、よく似ているように思えますが、実は少し違います。
従業員満足度というのは、給料や福利厚生、働く環境といった「待遇」に対する満足のことです。
もちろんこれも大切ですが、満足しているからといって、会社の成長のために積極的に行動するとは限りません。
一方で、エンゲージメントは、会社の考え方に共感して、「この会社をもっと良くしたい!」「成長に貢献したい!」という自発的な気持ちのことです。
会社と社員がお互いに成長し合える関係、と言えるかもしれません。
この違いを分かっておくことが重要になります。
特徴 | 従業員満足度 | エンゲージメント |
---|---|---|
焦点 | 今の状況や待遇への快適さ、満足感(待遇への満足) | 仕事への情熱、目標へのコミットメント、貢献意欲(成長への貢献意欲) |
主な促進要因 | 給与、福利厚生、職場環境、雇用の安定性 | 意義のある仕事、成長機会、承認、リーダーシップ |
従業員の状態 | 「得るものに満足している」(受動的) | 「最善を尽くしたい」(能動的) |
企業への影響 | 離職率低下の可能性はあるが、業績への直接的影響は限定的 | 生産性向上、イノベーション促進、顧客満足度向上、離職率低下 |
関係性 | 一方向的(会社が提供→従業員が満足) | 双方向的(従業員が貢献⇔会社が成長を支援) |
生産性の向上や優秀な人材の定着といったメリットがある
エンゲージメントスコアが高いと、会社にとってもメリットがあります。
まず、生産性の向上です。
やる気に満ちた社員は仕事に集中して、より質の高い仕事をこなせるようになるでしょう。
厚生労働省の調査などでも、エンゲージメントスコアが高いほど、個人も企業も労働生産性の向上を実感していることが示唆されています。
次に、優秀な人材が会社に残りやすくなることです。
会社や仕事に愛着を感じている社員は、そう簡単には辞めません。
エンゲージメントスコアが低いと離職率が高まるというデータもあるので、人材の流出を防ぐことは大切です。
さらに、お客様からの評判や会社のイメージアップも期待できます。
社員の熱意はお客様にも伝わりやすく、良いサービスにつながるためです。
人的資本経営で人材価値の可視化が求められているため注目されている
エンゲージメントスコアが特に注目されているのは、「人的資本経営」という考え方が広がってきたためです。
これは、社員をコストではなく「資本」、つまり会社の価値を生み出す大切な存在と捉える考え方です。
人的資本経営では、エンゲージメントスコアが社員という「資本」の価値を「見える化」する重要なものさしになります。
国もこの動きを後押ししていて、経済産業省の「人材版伊藤レポート」(2020年)や内閣官房の「人的資本可視化指針」(2022年)などでも、従業員エンゲージメントの重要性が指摘されています。
エンゲージメントを高めることが、会社の収益アップにもつながると考えられているのですね。
少子高齢化で働き手が減っている日本では、今いる社員の力を最大限に引き出し、長く働いてもらうことが重要です。
エンゲージメントスコアは、この人的資本の「健康状態」、すなわち従業員がどれだけ意欲を持ち、組織と一体となって生産的に活動しているかを示すバロメーターとなるのです。
エンゲージメントスコアの測り方と始め方
エンゲージメントスコアの重要性が分かったところで、次に「どのように測るの?」という疑問が出てきます。
ここでは、具体的な測り方について見ていきましょう。
エンゲージメントサーベイというアンケート調査で測定する
エンゲージメントスコアを測る一般的な方法は、「エンゲージメントサーベイ」というアンケート調査です。
これは、社員が会社や仕事に対してどれだけ愛着や熱意、貢献したい気持ちを持っているかを明らかにするための調査なのです。
このサーベイを通じて、会社全体のエンゲージメントの状態を把握し、どこが強みで、どこを改善すれば良いのかを見つけることができます。
高頻度短時間のパルスサーベイでリアルタイムな変化を把握
注目されているのが「パルスサーベイ」です。
これは、数問程度の短いアンケートを、週に1回や月に1回といった高い頻度で行うものです。
組織の「脈拍」を測るように、社員の気持ちの変化をリアルタイムに近い形でキャッチすることを目的としています。
パルスサーベイのメリットは、社員の負担が少なく、新しい取り組みをした後の効果や忙しい時期の社員の気持ちの変化などをすぐに把握できる点です。
問題が大きくなる前に対処できるでしょう。
年1回などのセンサスサーベイで組織全体の課題を分析
パルスサーベイとは対照的なのが、年に1回など、少し時間をかけて行う「センサスサーベイ」です。
これは、全社員を対象に、より多くの質問で、会社全体のエンゲージメントの状態をじっくりと分析する調査です。
組織全体の大きな課題や、長期的な傾向を見つけるのに役立ちます。
最近では、パルスサーベイとセンサスサーベイを組み合わせて活用する会社も増えています。
特徴 | パルスサーベイ | センサスサーベイ |
---|---|---|
頻度 | 高い(例:週次、月次) | 低い(例:年次、隔年) |
質問数 | 少ない(例:5~15問) | 多い(例:50~100問以上) |
回答時間 | 短い(例:2~5分) | 長い(例:15~30分) |
主な目的 | リアルタイムな状況把握、迅速なフィードバック、問題の早期発見 | 詳細な分析、システム的な課題の特定、長期的な傾向把握 |
範囲 | 限定的、特定のトピック | 広範、包括的 |
最適な用途 | 変化のモニタリング、機敏な対応、施策実施後の効果測定 | 戦略策定、ベンチマーキング、根本原因の分析 |
eNPSやQ12など信頼性の高い指標を活用した質問が有効
エンゲージメントを測るときには、すでに効果が認められている調査方法や質問を使うのがおすすめです。
代表的なものに、「eNPS(イーエヌピーエス)」とギャラップ社の「Q12(キュートゥエルブ)」があります。
eNPSは、「今の会社を友人や知人にどれくらい勧めたいですか?」という質問で、社員の会社への愛着度を測るものです。
ギャラップ社のQ12は、長年の研究に基づいて作られた12個の質問で、社員のエンゲージメントと会社の業績との関連性が高いと言われています。
例えば、「職場で自分が何を期待されているかを知っているか」や「仕事に必要なものはそろっているか」といった、基本的なことから、成長の機会に関する質問まで含まれています。
こういった信頼できる指標を使うことで、より客観的なデータを集めることができるでしょう。
No. | 質問項目 | 関連する要素 |
---|---|---|
Q1 | 職場で自分が何を期待されているかを知っているか | 仕事の明確性、基本的なニーズ |
Q2 | 仕事をうまく進めるために必要な材料や道具がそろっているか | 業務遂行に必要な資源、基本的なニーズ |
Q3 | 職場で毎日、自分の得意なことをする機会があるか | 強みの活用、自己効力感 |
Q4 | この7日間で、よい仕事をしたと認められたり、褒められたりしたか | 承認、フィードバック |
Q5 | 上司または職場の誰かが、自分をひとりの人間として気にかけてくれているようだ | 人間的配慮、サポート |
Q6 | 職場の誰かが自分の成長を促してくれるか | 成長支援、育成 |
Q7 | 職場で自分の意見が重要であると思われるか | 意見の尊重、参加意識 |
Q8 | 会社の使命や目的が、自分の仕事は重要だと感じさせてくれるか | 仕事の意義、目的意識 |
Q9 | 自分の同僚や仲間たちは質の高い仕事をすることにコミットしているか | チームのコミットメント、同僚の質 |
Q10 | 職場に最高の友人がいるか | 良好な人間関係、帰属意識 |
Q11 | この6ヶ月間に、職場の誰かが自分の進捗について話してくれたか | 進捗のフィードバック、成長実感 |
Q12 | この1年間で、仕事上で学び成長する機会があったか | 学習と成長の機会、自己実現 |
エンゲージメントスコアを上げる具体的な方法
スコアを測って現状が分かったら、次はいよいよスコアを上げるための取り組みです。
ここでは、効果が期待できるいくつかの方法をご紹介します。
会社のビジョンや目標をわかりやすく共有し仕事の意義を高める
社員のエンゲージメントを高める基本は、会社のビジョンや目標を分かりやすく伝えることです。
自分の仕事が会社の大きな目標にどのようにつながっているのかが分かると、仕事へのやりがいもアップするでしょう。
仕事の「なぜ?」が分からないと、やる気が下がってしまう大きな原因になります。
具体的には、社長からのメッセージを定期的に発信したり、チームごとに目標を分かりやすく説明したりするのが効果的です。
心理的安全性を高め失敗を恐れず意見が言える環境をつくる
エンゲージメントを上げるには、「心理的安全性」の高い職場づくりも欠かせません。
心理的安全性とは、チームの中で「こんなこと言ったら怒られるかな…」と心配せずに、自分の考えやアイデアを自由に発言できる状態のことです。
心理的安全性が低いと、良いアイデアがあっても発言できなかったり、問題が見過ごされたりすることがよくあります。
逆に、リーダーが失敗を恐れずに意見を言える雰囲気を作ると、チームの力は伸びるのです。
心理的安全性を高めるには、リーダー自身が自分の失敗をオープンに話したり、会議で色々な意見が出るように促したり、失敗を責めるのではなく学びの機会と捉えたりすることが大切です。
定期的な1on1ミーティングで上司と部下の信頼関係を築く
上司と部下の信頼関係は、エンゲージメントの土台です。
信頼関係を強くするのに効果的なのが、定期的な「1on1ミーティング」です。
上司と部下が1対1で行う面談のことで、仕事の進み具合だけでなく、部下の成長や悩み、キャリアについて話し合う場となります。
正しく行えば、効果は大きいです。
効果的な1on1のためには、毎週か隔週で30分~1時間程度の時間を確保し、部下が話したいことを中心に話し、上司はアドバイスよりも聞くことやサポートに徹するのがポイントです。
プロセスや貢献度も評価し頑張りが報われる公平な制度にする
社員を評価する制度も、エンゲージメントに影響します。
評価が不公平だと感じたり、結果だけが重視されて途中の頑張りが見てもらえなかったりすると、社員のやる気は下がってしまうでしょう。
エンゲージメントを高める評価制度は、評価の基準がはっきりしていて、誰に対しても公平で、結果だけでなくプロセスや努力も評価することが大切です。
数字で測りやすい結果ばかりを重視して、チームワークや真面目な取り組みといった「どのように頑張ったか」が見過ごされがちなケースが少なくありません。
頑張っても報われないと感じたり、結果のためなら何でもありという人が評価されたりするのを見ると、社員のエンゲージメントは一気に下がってしまいます。
上司だけでなく同僚や部下など色々な人から評価をもらう360度評価や、社員同士で感謝や称賛を送り合うピアボーナスといった方法も考えられます。
エンゲージメントスコアのよくある質問
エンゲージメントスコアを導入したり、活用したりする中で、様々な疑問が出てくるかもしれません。
ここでは、よくある質問にお答えしていきます。
スコアが急に下がったときはどうすればいい?
エンゲージメントスコアが急に下がってしまったら、慌てずに、まずは冷静に原因を探ることが大切です。
まずは、どの部署や層でスコアが下がっているのかを詳しく見てみましょう。
そして、スコアが下がった時期に、会社や周りで何か変化がなかったか(組織変更や新しいルールの導入など)を確認します。
大切なのは、アンケートの数字だけでは分からない「なぜ下がったのか」を理解するために、社員に直接話を聞いてみることです。
不公平な評価や厳しすぎるルール、個人の強みを活かせない仕事などが原因かもしれません。
調査はどのくらいの頻度でやるべき?
エンゲージメントサーベイをどれくらいの頻度で行うのがベストか、というのは会社によって異なります。
年に1回か2年に1回の詳しい調査(センサスサーベイ)と、さらに短い間隔で行う簡単な調査(パルスサーベイ)を組み合わせることもおすすめです。
部署によってスコアが違うときの対策は?
部署によってエンゲージメントスコアに差が出るのは、ある程度自然なことです。
仕事内容やリーダーのタイプ、チームの雰囲気などが違うからですね。
大切なのは、全ての部署が良い状態を保ち、改善していくことです。
対策としては、まずスコアが低い部署の状況を詳しく分析します。そして、その部署のリーダーに結果を伝え、一緒に改善策を考えてもらうのが良いでしょう。
部署のメンバーも巻き込んで、みんなで解決策を話し合うのも効果的です。
アンケートの回答率が低いときはどうする?
エンゲージメントサーベイの回答率が低いと、データの信頼性が下がってしまう可能性があります。
できれば70~80%以上の回答率を目指したいところです。
回答率が低いのは注意信号です。多くの場合、アンケート疲れや会社への不信感、あるいは「答えても何も変わらない」という諦めが原因だったりします。
回答率を上げるには、まず、調査の目的や結果をどう活かすのか、そして社員にとってどのようなメリットがあるのかを伝えることが大切です。
次に、誰がどのように答えたかは秘密にすることを約束し、安心して本音を話せるようにしましょう。
【まとめ】エンゲージメントスコアを理解し組織の成長につなげる
この記事では、エンゲージメントスコアとは何か、どのようなメリットがあり、どうやって測り、どうすれば上げられるのか、という点についてお伝えしてきました。
エンゲージメントスコアは、社員の仕事への熱意や会社への貢献意欲を数字で表したもので、満足度とは違います。
エンゲージメントが高いと、生産性が上がったり、優秀な社員が会社に残りやすくなったり、新しいアイデアが生まれやすくなったりと、会社の成長に直接つながるのです。
測り方としては、年に1回程度の詳しい調査と、さらに短い間隔で行う簡単な調査を組み合わせるのが効果的です。eNPSやQ12といった信頼できる指標を使うのも良いでしょう。
この記事が、みなさんの会社でエンゲージメントを高めるきっかけなれば嬉しいです。