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人事評価に潜む確証バイアスとは?公平性をゆがめる心理の仕組みと防止策

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人事評価で「最初の印象がずっと残る」「一度の失敗で評価が下がる」――そんな偏りの背景には、確証バイアスという心理の働きがあります。確証バイアスとは、自分の考えを裏づける情報だけを集め、反対の事実を無意識に排除してしまう思考のクセのこと。本記事では、このバイアスがどのように評価の公平性をゆがめるのか、その心理的メカニズムと、人事が実践できる防止策(評価者教育・多面評価・制度設計)をわかりやすく解説します。

目次

確証バイアスとは?判断が偏る“思考のクセ”

私たちは、日々の判断の中で「自分の考えは正しい」と感じやすいものです。
この心理的な傾向を 確証バイアス(confirmation bias) と呼びます。
人は無意識のうちに、自分の仮説を裏づける情報を重視し、反対の情報を軽視してしまうのです。
この“思考のクセ”は、ビジネスや人事評価の現場にも深く関わっています。
ここでは確証バイアスの基本と、評価場面で起きやすい心理の流れを解説します。

確証バイアスの意味と、人が「信じたいもの」を選ぶ心理

確証バイアスとは、自分の信じたい情報ばかりを重視してしまう心理的な偏りのことです。
たとえば「この部下は仕事ができる」と一度感じると、その印象を裏づけるエピソードばかりが記憶に残り、ミスや課題は目に入りにくくなります。
これは 自分の判断を守りたい・正しかったと思いたい という自然な心の反応によるものです。
人は不確実さを嫌うため、安心できる情報を無意識に選び取ってしまうのです。

評価者が“思い込みで判断”してしまう理由

人事評価の場面では、確証バイアスが特に起こりやすいといわれます。
一度「この人は優秀だ」と感じると、その印象を裏づける成果ばかり目につき、逆の情報を探す意識が弱まってしまうのです。
心理学の研究でも、人は仮説を検証するよりも 「自分の考えを正しいと思いたい」 という気持ちを優先する傾向があるとされています。
評価者も同様に、限られた時間や情報の中で 判断を早く終わらせたい“省エネ思考” に陥りやすく、
その結果、視野が狭まり、客観性を欠いた評価につながってしまいます。

ビジネス・人事の現場で起きる確証バイアスの例

確証バイアスは、職場のあらゆる意思決定に影響します。
たとえば採用面接で「第一印象が良い」候補者を高く評価したり、営業で「成功した事例」ばかりを分析して改善点を見逃したりするケースです。
人事評価では特に、印象や思い込みが成果評価をゆがめることが問題になります。
こうした思考の偏りを放置すると、評価の公平性だけでなく、社員のモチベーションや信頼関係にも影響しかねません。

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人事評価・人事判断における確証バイアスの具体例

人事評価の場面では、確証バイアスが特に顕著に表れます。
評価者が「この人はできる」「少し頼りない」と一度感じると、その印象を裏づける出来事ばかりを記憶し、逆の情報を見落としてしまうのです。
この章では、人事判断においてどのように確証バイアスが生じ、どんな偏った評価を引き起こすのかを、具体的なケースを交えて見ていきます。

初期印象を裏づける情報ばかりを集めてしまう

評価者は、部下と接する初期段階で形成された印象をもとに、
「その印象を裏づける情報ばかりを集めてしまう」 傾向があります。
たとえば、第一印象で「しっかりしている」と思った部下には、成果や前向きな言動ばかりが目に入り、課題や弱点には気づきにくくなります。
このような初期印象の固定化は、事実よりも印象に基づいた評価を生み、
その後の育成や評価の方向性にも影響を与えてしまうのです。

一度の失敗を“能力不足”と決めつけてしまう

確証バイアスは、マイナスの印象にも働きます。
たとえば、部下が一度大きなミスをしたとき、「この人は注意力が足りない」と思い込むと、
その後どんなに努力しても “能力が足りない人”というラベル を外せなくなってしまいます。
短期的な出来事を長期的な評価に結びつけてしまうと、成長の兆しを見逃しやすくなります。
評価者は「過去の印象ではなく、現在の行動や改善度を見る視点」を持つことが重要です。

部署やチーム全体の印象が個人評価に影響する

「この部署は成果を出している」「あのチームは動きが遅い」――
こうした集団単位の印象が、個人評価にまで波及することがあります。
チームの雰囲気や過去の実績が先入観となり、個人の実力や努力が正しく見えなくなるのです。

たとえば、目立たない部署の社員が優れた成果を出しても評価されにくい、
反対に“強いチーム”のメンバーは実力以上に高く見られる、ということが起こります。
この傾向は、他のバイアス(例:ハロー効果)とも重なりやすいため注意が必要です。
※関連リンク:ハロー効果とは?人事評価に起こる偏りと5つの対策

昇進判断や評価会議で意見が偏っていく

複数の評価者が集まる会議でも、確証バイアスは起こります。
会議の中で最初に出た意見や上司の印象が “集団の共通認識”として固定されやすい のです。
その結果、他の評価者が異なる視点を持っていても発言を控えたり、無意識に多数派に同調してしまうことがあります。
こうした“集団内の確証バイアス”は、最も危険なケースのひとつ。
一人ひとりの評価が十分に検討されないまま、
「全員一致」という形で結論が出てしまうリスクを孕んでいます。

このように確証バイアスは、個人の印象操作だけでなく、チーム・組織全体の評価プロセスにも影響を及ぼします。
次の章では、なぜこうした思考の偏りが起こるのか、その心理的な背景を掘り下げていきます。

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評価者の思考が偏る背景 ― 確証バイアスを生む3つの心理プロセス

確証バイアスは、単なる思い込みではなく、評価者の心理・思考・環境が重なって起きる自然な現象です。
人事評価の場面では、「早く判断を終わらせたい」「自分の評価を正しかったと思いたい」「周囲と衝突したくない」などの心理が影響します。
この章では、確証バイアスが生まれる背景を、評価者の心理・思考・環境という3つの要因から整理して解説します。

判断の一貫性を保ちたいという心理

人は、過去の判断を覆すことに強い抵抗を感じます。
この心理を「一貫性の原理」と呼び、確証バイアスの根底にある要素のひとつです。
評価者も一度「この人は優秀だ」「少し頼りない」と判断すると、その評価を変えるのが難しくなります。
自分の見る目を誤ったと認めることは、自己否定のように感じられるためです。
その結果、評価を守るために都合のよい情報だけを集め、反対の証拠を避けてしまうという偏りが生じます。
公平な評価のためには、「過去の判断も更新されてよい」と考える柔軟さが欠かせません。

判断を急ぐと働く“思考のショートカット”

評価の現場では、限られた時間の中で多くの判断を下す必要があります。
このとき脳は、「過去の印象や経験をもとに素早く結論を出す」というショートカット思考を使います。
心理学ではこれを「直感的判断」と呼びます。
短時間での意思決定には便利ですが、検証を省略してしまうため、
「なんとなくそう感じる」「前も同じだったから」という根拠の薄い判断を生みやすくなります。
忙しい時期ほどこの傾向が強まり、思考の省略が偏りを助長する点に注意が必要です。

職場の雰囲気や関係性が偏りを強める

確証バイアスは、個人の心理だけでなく職場の環境や関係性からも影響を受けます。
たとえば、上司に意見を言いづらい組織では、異なる見方が共有されにくく、
「みんな同じ評価をしているはず」という錯覚が生まれます。
また、心理的安全性が低い環境では、反対意見や異論が出づらく、偏りが固定化されてしまいます。
評価会議で多様な意見が出ないのは、評価者のバイアスだけでなく、組織文化の影響でもあるのです。
確証バイアスを防ぐには、「異なる視点を歓迎する文化づくり」が欠かせません。

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確証バイアスが人事評価に与える影響

確証バイアスは、評価者個人の思考の偏りにとどまらず、組織全体の評価制度や人材マネジメントに深刻な影響を及ぼします。
公平性を損ない、成長支援の機会を逃し、評価会議そのものの質を下げてしまうこともあります。
ここでは、人事評価における代表的な3つの影響を整理します。

公平性の欠如:印象が実力を上回る

確証バイアスが強まると、評価が印象や好感度に左右されるようになります。
たとえば「いつも前向きに発言している」「仕事が早い」などの表面的な要素が、実際の成果よりも高く評価されるケースです。

この状態が続くと、社員は「努力しても正当に見てもらえない」と感じ、モチベーションを失います。
また、評価への信頼が下がると、組織全体のエンゲージメントも低下します。
公平な評価制度を維持するには、印象ではなく行動・成果に基づくデータの可視化が欠かせません。

成長支援の機会損失:誤ったフィードバックが連鎖する

確証バイアスは、フィードバックの質を歪める原因にもなります。
一度「課題が多い人」とラベルを貼られた社員は、改善してもその変化が正しく評価されないことがあります。
すると上司からのフィードバックも偏り、成長の方向性を見誤る結果につながります。
この連鎖は、本人のやる気を奪うだけでなく、潜在的に優秀な人材を逃すリスクにもなります。
誤った認識を防ぐには、複数の視点で成果を検証し、フィードバックを客観的に見直す仕組みが重要です。
詳しいコメント設計の方法は、「人事評価コメントが書けない原因と書き方のコツ【例文つき】」
をご覧ください。

評価会議で失われる多様性:議論が深まらない構造的リスク

評価会議では、本来さまざまな視点から意見を交わすことで、評価の精度を高めることが目的です。
しかし確証バイアスが強まると、最初に出た印象や上司の意見が“正解”として共有されてしまう傾向があります。
その結果、異なる意見が出にくくなり、議論が「確認の場」に変わってしまうのです。
多様な視点が排除されると、評価の妥当性だけでなく、組織の意思決定スピードや質も低下します。
会議の質を保つためには、異なる意見を歓迎し、根拠をもとに議論を深める文化を根づかせることが不可欠です。


確証バイアスの影響は、評価の精度低下だけでなく、組織文化・人材育成・信頼構築のすべてに波及します。
次の章では、こうした偏りを最小限に抑えるための、人事・組織的なアプローチを解説します。

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確証バイアスを防ぐための人事・組織的アプローチ

確証バイアスは、意識だけで防げるものではありません。
人事制度や評価フローに構造的な仕組みを組み込むことで、初めて再発を抑えることができます。
ここでは、評価者教育・制度設計・データ活用の3つの観点から、組織的にバイアスを防ぐための具体策を紹介します。

評価者教育:バイアスを「自分ごと」として認識させる

確証バイアスを防ぐ第一歩は、評価者自身が「自分にも起きている」と気づくことです。
研修やワークショップでは、実際の評価ケースをもとに「どんなときに偏りが生じやすいか」を体験的に学ぶことが効果的です。
ポイントは、バイアスを“悪いもの”として責めるのではなく、誰にでも起きる思考のクセとして理解させること。
「気づき→振り返り→修正」の流れを定期的に取り入れることで、組織全体の評価精度が高まります。

多面評価(360度フィードバック)の活用

一人の評価者の主観に頼らず、複数の視点を取り入れることが、確証バイアスの抑制に効果的です。
360度フィードバックでは、上司・同僚・部下・本人といった異なる立場から評価を集めることで、
「特定の印象」ではなく「全体像」で判断できるようになります。
また、定期的な実施により、変化や成長の過程を客観的に捉えやすくなります。
多面評価は単なる制度ではなく、“多様な視点を尊重する文化”の象徴として運用することが重要です。

多面評価の仕組みや導入手順について詳しく知りたい方は、
「多面評価とは?メリット・デメリット・導入手順・評価項目を解説」をご覧ください。

また、360度評価の活用方法については、
「360度評価とは?メリット・デメリットと実際の活用方法を紹介」も参考になります。

評価プロセスの構造化:チェックリストと定量指標の導入

評価の公平性を保つには、印象や記憶に頼らない仕組み化が欠かせません。
評価基準やプロセスを明文化し、具体的な行動指標をチェックリスト化することで、
感覚的な判断を減らすことができます。
また、複数の評価者が同じ基準でレビューできるよう、
「評価会議の議事テンプレート」「コメントの観点一覧」などを用意すると再現性が高まります。
構造的なフローを整えることが、“感覚”から“データ”への転換を促す第一歩です。

データドリブン評価とAIの活用で裏づけを強化

近年では、評価データやパフォーマンス指標を可視化・定量化する仕組みが進化しています。
AIやHRテクノロジーを活用すれば、個人の評価傾向やフィードバック内容を自動分析し、
「主観に偏りすぎていないか」をチェックできます。
また、データを活用することで、評価の根拠を誰もが共有できる“透明な文化”を築けます。
テクノロジーは人の判断を置き換えるものではなく、公平性を支える“第三の視点”として位置づけるのが理想です。


確証バイアスの防止は、「気づき×仕組み×データ」の3つの柱で進めることがポイントです。
制度と文化の両面から整えることで、評価の公正さが定着し、組織全体の信頼度が高まります。

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確証バイアスを減らすための評価者・組織の考え方

確証バイアスをなくすことは難しくても、意識の持ち方を変えることで影響を最小限に抑えることはできます。
人事評価の現場で求められるのは、「偏りをなくす完璧さ」ではなく、「偏りを自覚して修正できる柔軟さ」です。
ここでは、評価者と組織が共に持っておきたい3つの考え方を紹介します。

「自分の評価は仮説」と捉える柔軟な姿勢

評価とは、限られた情報をもとに行う仮説的な判断です。
一度下した評価を「正解」と決めつけてしまうと、後からの見直しや他者の意見を受け入れづらくなります。
大切なのは、「今の判断は一つの見方にすぎない」と意識すること。
この姿勢を持つだけで、追加情報や新しいデータを取り入れやすくなります。
評価はゴールではなく、成長支援のために検証し続けるプロセスであるという考え方が重要です。

反証を歓迎する文化を育てる|心理的安全性の確保

確証バイアスは、異なる意見を言いづらい空気の中で強まります。
評価会議で「その見方には別の可能性もある」と言える環境があるかどうかが、公平な議論を左右します。
上司が「自分の判断が絶対ではない」と姿勢で示すことが、安心して意見を出せる第一歩です。
心理的安全性の高い組織では、自然に多様な視点が集まり、思い込みを補正する力が働きます。
評価精度を高めるには、仕組みだけでなく「異論を歓迎する文化づくり」が欠かせません。

完全排除ではなく、“構造的に抑える”という考え方

確証バイアスは、誰にでも起こりうる人間の自然な反応です。
そのため、個人の努力でなくそうとするのではなく、組織として仕組みで抑制する発想が大切です。
複数の評価者を設ける、数値指標と行動観察を組み合わせる、定期的にレビューを行う――
こうした“構造的な工夫”が、偏りを最小化します。
バイアスを前提に設計された制度こそ、現実的で持続可能な公正評価の仕組みと言えるでしょう。


確証バイアスを減らすには、個人の意識変化と組織的な設計の両輪が欠かせません。
完璧を求めるのではなく、偏りを前提に正していく考え方を共有することが、公平な評価文化の基盤となります。

確証バイアスを抑える考え方 ― 人の意識と制度の仕組みの両面から見る

確証バイアスは、個人の思考の癖だけでなく、組織の仕組みや環境からも生まれます。
そのため、評価者個人の意識改革(ソフト面)と、評価制度や運用プロセスの整備(ハード面)の両方が欠かせません。
ここでは、公平な評価を保つために、意識と制度の両輪から取り組む3つの実践ポイントを紹介します。

評価を“見直せるもの”として扱う

確証バイアスを減らす第一歩は、評価を一度決めたら終わりにしないことです。
人は自分の判断を正しいと思い込みがちですが、評価は常にその時点での仮の判断にすぎません。
「あとで見直せる」「追加情報で修正できる」と考えることで、思い込みを柔らかく保てます。
また、評価プロセスに定期的なレビューや複数人の再確認の場を設けると、
制度的にも偏りをリセットできます。
“見直す前提”を共有することが、公平な評価文化の第一歩です。

多様な視点を受け入れる文化を育てる

確証バイアスは、異なる意見を出しにくい環境で強まります。
「この見方もある」と気軽に言える雰囲気をつくることが、評価の偏りを減らす近道です。
心理的安全性のある職場では、立場や年次に関係なく意見が出やすく、
自然と多様な視点が集まります。
上司が「自分の評価も完璧ではない」と言葉で示すことが、反証を歓迎する文化の起点です。
異論を受け止める姿勢が、組織全体の判断精度を底上げします。

偏りを減らす仕組みを制度として組み込む

意識だけの努力には限界があります。
だからこそ、制度面でバイアスを抑える構造を組み込むことが重要です。
たとえば、複数評価者制度、行動指標と成果指標の併用、
評価プロセスのチェックリスト化など。
これらは、主観を排除し、仕組みとして公正さを支える“安全装置”になります。
制度設計の段階から「どこでバイアスが入りやすいか」を意識しておくことで、
再現性のある公平な評価が実現します。


確証バイアスを抑えるには、人が柔軟に考え、制度がそれを支える構造を整えることが欠かせません。
意識と仕組みを連動させることで、偏りを前提に管理し、“公正さを維持できる評価文化”が持続的に育ちます。

他の評価バイアスとの関係性と違い

確証バイアスは、評価の場でよく見られる複数のバイアスと密接に関係しています。
特にハロー効果やアンカリング効果などと重なりやすく、無意識のうちに評価の精度を下げてしまうことがあります。
ここでは、代表的な評価バイアスとの違いや共通点を整理しながら、確証バイアスをより正確に理解していきましょう。

ハロー効果との違い:印象が原因か、確信が原因か

ハロー効果は、ある一つの印象(たとえば「明るい」「責任感がある」など)が、他の評価項目にも影響してしまう現象です。

一方、確証バイアスは「自分の考えを正しいと思い込み、それを裏づける情報ばかりを集める」心理。
つまり、ハロー効果は印象が評価をゆがめるのに対し、確証バイアスは“思い込みが評価を固定化する”
という違いがあります。

人事評価では、この2つが同時に働くことで「印象に基づいた思い込み」が強化されるため、特に注意が必要です。
ハロー効果については、ハロー効果とは?人事評価に起こる偏りと5つの対策をわかりやすく解説
で詳しく解説しています。

アンカリング効果との関係:最初の印象が判断を固定化する

アンカリング効果とは、最初に得た情報(アンカー)が基準となり、その後の判断が引きずられてしまう現象を指します。
たとえば、最初の面談で「優秀そう」と感じた印象が、その後の評価の基準になってしまうケースです。

確証バイアスは、その“固定化された印象”を守ろうとする心理として働きます。
つまり、アンカリング効果が「思い込みの始まり」であり、確証バイアスは「それを強化する力」。
この2つは連鎖的に作用しやすいため、初期印象を客観的に見直す習慣が欠かせません。

他の認知バイアスとの複合的な影響

確証バイアスは単独で働くこともありますが、実際の評価現場では複数のバイアスが重なって発生します。
たとえば、正常性バイアス(変化を認めたくない心理)や自己奉仕バイアス(自分の判断を正当化する心理)など。こうした心理が組み合わさると、評価が「過去の印象」や「自分の都合」に引きずられやすくなります。
そのため、人事制度全体でバイアスを意識的にマネジメントすることが重要です。

他のバイアスの種類や防止策については、
人事評価のエラー・バイアス10選|不公平を防ぐ仕組みと改善策を解説
で詳しく解説しています。


複数のバイアスは互いに影響し合い、ひとつの判断をより強固な思い込みに変えてしまうことがあります。
重要なのは、バイアスを「なくす」ではなく、「理解し、組織として制御する」姿勢です。
確証バイアスを中心に据え、他のバイアスとの関係性を把握することで、公平な評価を実現するための土台が整います。

ポジティブな確証バイアスと“自信”の関係

確証バイアスというと「思い込み」「偏り」といったネガティブな印象を持たれがちですが、
すべてが悪い影響をもたらすわけではありません。
人が前向きに行動したり、挑戦を続けたりするためには、「自分はできる」と信じる力=確信が必要です。
ここでは、確証バイアスが“健全な自信”として働くケースと、その活かし方を解説します。

適度な確証は意思決定を支える“行動エネルギー”になる

確証バイアスがまったくない状態では、決断に必要な確信が持てず、行動が遅れがちになります。
たとえば、マネージャーが新しい施策を提案するとき、「失敗するかもしれない」と不安ばかり考えていては前に進めません。
一方で、「この方向で間違っていない」という適度な確信は、迷いを減らし行動を加速させます。

確証バイアスを完全に消すのではなく、「自分の考えを支える根拠を整理する」ことで、前向きな意思決定に変えることができます。
過信ではなく“根拠ある自信”を持つことが重要です。

“自信”は周囲への信頼にもつながる

確証バイアスが適度に働くことで、自分の判断や行動に一貫性が生まれます。
一貫性は周囲からの信頼を得るうえで大きな要素です。
また、「自分の判断を信じて動ける」人は、部下の挑戦や提案も肯定的に受け止めやすくなります。

一方で、自信が行き過ぎると他者の意見を受け入れにくくなるため、「確信を持つこと」と「他者の視点を聞くこと」のバランスを意識することが大切です。
自分の考えを自信を持って伝える方法は、
人事評価コメントが書けない原因と書き方のコツ【例文つき】
で詳しく解説しています。

ポジティブな確証を育てる3つの実践ポイント

確証バイアスを“前向きな力”として活かすためには、次の3つを意識すると効果的です。

  • 事実に基づいた根拠を確認する(感覚ではなくデータ・行動実績で支える)
  • 定期的に他者の意見を取り入れる(確信を更新する仕組みをつくる)
  • 成功体験を振り返り、再現可能な形で記録する(自信を構造化する)

これらを繰り返すことで、確証バイアスを“行動を支える確信”へと昇華できます。
バイアスを完全に消すのではなく、自信と慎重さを両立させる設計が理想です。


確証バイアスは「排除すべきもの」ではなく、「適度に管理すべきもの」です。
前向きな確信は人を動かし、組織を成長させる力にもなる
大切なのは、“思い込み”を“意図的な自信”に変える意識です。

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まとめ:確証バイアスを意識できる組織が公平な評価文化をつくる

確証バイアスは、誰にでも起こる自然な心理反応です。
問題は“存在すること”ではなく、“気づかず放置すること”。
評価者一人ひとりが、自分の判断の偏りに気づき、意識的に修正していく姿勢が求められます。

そのためには、教育(気づき)×プロセス(仕組み)×データ(裏づけ)の3軸で対策を重ねることが大切です。
こうした仕組みが整うと、評価は主観ではなく事実に基づいた対話の場へと変わっていきます。
そして、上司・部下・チーム全体が互いの成長を支援し合う、
“公平で学びのある評価文化”**が生まれます。

確証バイアスは排除ではなく、マネジメントすべき現象です。
構造的に偏りを抑えながら、公平な評価を実現する方法は
人事評価の課題とは?よくある問題点と改善方法をわかりやすく解説
で詳しく解説しています。

FAQ(よくある質問)

Q1. 確証バイアスは、完全に無くすことができるのでしょうか?
残念ながら、確証バイアスを完全に無くすことはできません。人間の脳は効率的に判断するために「自分の信じたい情報」を優先して処理する傾向を持っています。
重要なのは、無くすことではなく「自分にも偏りがある」と気づき、意識的に修正することです。
そのためには、複数人での評価やデータの裏づけ、他者からのフィードバックを組み合わせる仕組みが有効です。
Q2. 人事評価で確証バイアスを防ぐために、日常的にできることはありますか?
はい。まず、評価の前に「どんな基準で判断しているか」を言語化しておくことが大切です。
また、印象に残った事例だけでなく、具体的な行動・成果を記録しておくと主観を抑えられます。
定期的に他の評価者と意見交換を行うことも効果的です。
仕組みづくりの方法は、人事評価の課題とは?よくある問題点と改善方法をわかりやすく解説で詳しく解説しています。
Q3. 確証バイアスに気づけるようになるためのトレーニング方法はありますか?
代表的なのは「バイアス認知トレーニング」です。具体的には、実際の評価ケースをもとに「自分の判断がどう偏ったか」を振り返るワークを行います。
他者の視点を取り入れる360度フィードバックや、データをもとに評価を検証する仕組みも有効です。
組織的にこうした取り組みを行うことで、確証バイアスを“気づける文化”が育ちます。


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